20年東京五輪へ、野球ファンの夢が広がった。国際オリンピック委員会(IOC)は8日、モナコで臨時総会を開き、改革案「五輪アジェンダ2020」を討議。競技の枠を撤廃し、開催都市の種目追加提案を認めることを承認した。決定を受けて東京五輪組織委員会は追加種目の選定作業に着手。人気と施設面などから08年北京大会を最後に除外された野球・ソフトボール、日本伝統の空手の実施が有力とみられる。

 IOCの画期的な改革案が、野球を後押しする。開催都市の種目追加提案権は40項目ある中長期改革案の1つだが、日本にとっては大きな決定となった。昨年9月のIOC総会で20年大会以降の実施競技決定が話し合われ、レスリングに敗れて復帰の道が閉ざされた野球・ソフトボールに、再び可能性が出てきたのだ。

 どの種目を追加提案するかは、開催都市に任せられる。選定作業では誰にも分かる基準を設けて進められる見込みだが、組織委の森喜朗会長は「野球やソフトボールを入れることは、ファンも多く追い風になる」と話す。野球・ソフトボールは人気も高く、多くの観客を集めることが可能。大会の盛り上げとともに、入場収入増も期待できる。

 既存施設が使えるのも有利な点。東京ドームのほかにも、全国に会場候補がある。札幌で行われるサッカーに対し、ヤフオクドームで野球ができれば北海道から九州まで「オールジャパン」の東京五輪になる。同じく既存施設が使える空手とともに、東京都の舛添要一知事も前向き。野球が実施される可能性は高い。

 もっとも、課題もある。改革案では種目数310と参加選手数1万500人を上限としている。種目数は現在306で4種目余裕があるが、選手数はすでに上限を超えている。IOCのバッハ会長は「開催国枠で追加するケースは1万500人を超えてもよい」と柔軟な姿勢をみせているが、多くの人数が必要なチーム競技だけに、運営上の問題などで反発を招く可能性もないとはいえない。

 それでも、野球は国民的人気スポーツ。今年も、プロ野球には2300万人が足を運んだ。IOCのヒッキー理事(アイルランド)は「野球とソフトボールは東京から提案されれば確実に入るだろう。開催都市の利益を考えたユニークな改革」と話す。「東京五輪のための改革」とまで言い切るIOC委員もいる。

 組織委は「選定のスケジュールは未定」としているものの、種目追加が決まれば会場計画などの見直しもあるため早期の決定が必要になる。誰もが納得する評価基準を設け、選定した追加種目をIOCに提案する。早ければ次のIOC総会(来年7月・クアラルンプール)で20年五輪での野球・ソフトボール実施が決まる。