吉兆のフォークにかける。DeNA東野峻投手(28=オリックス)が宜野湾キャンプ第2クール最終日の11日、紅白戦に先発。2回を2奪三振を含む、パーフェクト投球を披露した。トライアウトを経て入団した“元開幕投手”が、先発ローテ入りへ勝負球を磨き、強烈なアピールを仕掛ける。

 生き残りへの「切り札」は原点回帰だった。東野はグラブの中で白球を指で挟んだ。2回1死、ルーキー倉本との対戦。追い込んでからの4球目で確かな手応えを感じた。「空振りは取れなかったけど、いい感じで落ちていた」。つかんだ感覚を自信に変えるために再び続けた。カウント2-2で勝負を決める最後もフォークで空振り三振に仕留めた。

 巨人時代に開幕投手を務めた11年。宮崎での春季キャンプの室内ドームで1人、フォークをネットに向かって投げ続けた。「あのときにつかんだ感覚をもう1回、思い出しながらやっている」。巨人では現レッドソックス上原、オリックスでも平野とフォークの達人たちにアドバイスを求めて回ったが「自分にはうまくフィットできなかった」。昨季、人生初の戦力外通告を受け、トライアウトで何とかチャンスをつかんだ右腕が最後に頼ったのは「かつての自分」だった。

 結果は出したが、この日は直球の最速が130キロ終盤にとどまり物足りなさは否めない。実績を持つ右腕だからこそ中畑監督も「1度戦力外になったという立場を考えれば気持ちは分かるけど、結果にこだわりすぎている。野性味をもっと出した投球を見せてほしい」と高いレベルでの注文をつけた。もちろん東野本人も分かっている。「闘争心がなくなったら僕みたいな投手はいらない。対外試合になったらガンガン行きます」と、きっぱり言い切った。【為田聡史】