<東京6大学野球:早大7-6明大>◇第6週最終日◇23日◇神宮

 早大が明大を下し、勝ち点を4として3季ぶり、法大に並ぶ最多43度目の優勝を決めた。先発のルーキー吉永健太朗投手(1年=日大三)が7回0/34失点(自責点2)と粘りの投球。救援陣が打たれ史上3人目の1年春の5勝目は逃したが、チーム勝利数(8)の半分を稼ぐ大車輪の働きだった。試合は延長10回、佐々木孝樹主将(4年=早実)が決勝打を放った。

 魔球でリーグを席巻した新人吉永が、早大に3季ぶりVをもたらした。重圧のかかる先発マウンドに「さすがに緊張した」が、8回途中まで4失点も自責点2。延長で優勝が決まるとベンチから駆けだし、上級生と抱き合った。昨夏甲子園に続くVに「優勝は優勝で同じような気持ち。投げた試合は全部勝ちたいけど、チームが勝つのが大前提。結果的にすごくうれしい」と喜んだ。

 昨年は投手陣崩壊でV逸した早大で、史上初の1年春に先発4戦4勝と救世主になった。高校時代に最速149キロの直球はほぼ130キロ台だが、特別コーチの小宮山悟氏(日刊スポーツ評論家)が「初見ではプロでも打てない」というシンカーが効いた。「左投手のカーブをイメージする」という軌道で、1度浮いてから左打者の外角へ斜めに落ちる。吉永は「打者の腰が浮くのが見える」という。

 環境が魔球が生んだ。両親はともに実業団でもプレーしたバドミントン選手。「記憶にないぐらい」幼少期からラケットを握った。「父といい勝負できる」という上級者は、羽根を打つ直前にラケットの裏面を使うフェイクを入れる。これで肘の柔軟性と「似ている」という腕の振りを得た。吉永はシンカー投球時、最終的に右手の甲が打者に向くまで曲げる。独特の投法で、打者を惑わす。

 上級生の配慮も吉永の活躍を後押しした。佐々木主将は「今年は4年生が少ない。下級生が優勝に力を貸したくなるようにした」。練習量で手本を示し、便所掃除も率先した。この日、4年生の佐々木、杉山、地引は勝ち越し打で援護。公私に黄金新人を助けた。【斎藤直樹】