<東都大学野球:専大12-6国学院大>◇第2週第2日◇17日◇神宮

 07年春以来12季ぶりに1部復帰した専大が、苦労人渡辺和哉捕手(2年=文星芸大付)の先制満塁弾など、3本塁打を含む14安打で今季初勝利を飾った。渡辺和は昨年3月に右肩手術を行い、リーグ戦初スタメンで初本塁打。12-6と国学院大を破り、1勝1敗の五分に戻した。

 これが、リーグ通算2打席目。1回1死満塁で、5番渡辺和が打席に立った。カウント3ボール1ストライクから狙っていた直球がやってきた。打球はバックスクリーンを直撃。「とにかく強く振ろうと思いました」と喜んだ。「戦国東都」での満塁弾は、専大の1部ラストイヤーだった07年春、青学大・小池(現ロッテ)以来12季ぶり。かつては日大・長野(現巨人)、亜大・松田(現ソフトバンク)ら侍戦士がマークした、選ばれし1発だ。

 初スタメンを告げられたのは朝だった。チームは3連敗。昨年3月に右肩を手術し、1年間リハビリした苦労人に、打線改造の白羽の矢が立った。高橋薫監督(56)は文星芸大付高(栃木)でも監督を務めた直系の大先輩。「大事な試合で使ってくれた」と意気に感じた。

 全体練習に合流できたのは今年2月。苦労を知る高橋監督は「1年分ぐらいの1発だったんじゃないですか」と言った。専大はリーグ最多31度の優勝を誇るが、昨秋まで11季連続2部の屈辱を味わった。苦労人のグランドスラムは、チームに勇気をもたらす1発になった。【前田祐輔】