楽天からドラフト2位指名された桜丘・中川大志内野手(18)が11日、愛知県豊橋市のホテルで契約金6000万円、年俸600万円(金額は推定)で仮契約を交わした。楽天サイドは森川業務部長、山田スカウトらが出席。中川は今夏以降、時給730円でコンビニでアルバイトをしていた経験を明かした。“コンビニ男”がプロへの1歩を踏み出した。

 仮契約を終えた中川は大きく深呼吸して報道陣からの質問に答えた。「想像できない金額です。プロになったんだなと実感した。元気で一生懸命に野球をしたい。両親やこれまで支えてくれた方々に感謝したい」。中川に提示された金額は契約金6000万円、年俸600万円(推定)。想像をはるかに超えた金額だった。それでも中川に浮かれた様子は一切なかった。

 それには訳があった。今夏の東愛知大会では7月下旬に4回戦敗退。その後も練習を続けていた中川は父明智さん(48)、母朝子さん(43)からアルバイトを勧められた。意図は「もしかしたら高校を卒業してプロの世界に飛び込むかもしれない。その前にお金を得ることの大変さ、お金の大切さを知ってほしかった」(朝子さん)だった。

 中川はそれを実行した。学校から許可をもらい、練習の合間に週3回、午後5時から午後10時まで知人が経営するコンビニでアルバイトを続けた。時給は730円。約3カ月でたまった金額は10万円に届かなかった。それでも「アルバイトをして良かった。お金を稼ぐことの大変さ、難しさを勉強できた。ためたお金は、なかなか使うことができない」と振り返った。

 今後も学校で練習を続ける予定。「プロに行っても自分らしく元気いっぱいプレーしたい。山崎武さんみたいに日本を代表するバッターになりたい。これからはアルバイトはできないが毎日、練習をします」と中川。入団発表は来月18日。高校球界屈指の長距離砲がプロ入りの前に積んだ“社会勉強”を厳しい勝負の世界での糧にする。【桝井聡】