探求心の塊だ。ロッテからドラフト2位で指名された京大・田中英祐投手(22=白陵)が24日、指名あいさつに訪れた球団フロントを質問攻めにした。京大百周年時計台の一室で、林信平球団本部長(53)らに疑問点をぶつけた。当初15分を予定していた指名あいさつは50分を超えたが、田中にとっては、プロ入り決断に向けて前進する有意義な会談となった。

 疑問点をそのままにしてはおけなかった。田中は、林本部長から「聞きたいことはありますか?」と促されると「セカンドキャリアはどのようになっているのですか?」と、気になっていたことを口にした。

 夢を抱きプロの世界に飛び込もうとする新人には似つかわしくない質問かもしれないが「親とも話してて分からない状態だったので、聞いてみたいと思っていた」と田中。強豪校に在籍したことがないため、先輩や監督に聞くわけにもいかない。田中にとっては、進路決断前のこの機会に聞くべきことだった。

 質問はそれだけにとどまらない。「寮生活というのはどうなってるのですか?」「これから入団までのスケジュールはどうなってるのですか?」「マスコミ対応はどうしたらいいでしょうか?」。次々と聞いていった。「考え得る可能性はすべてシミュレーションできる方がいい。選択肢をしっかり考える意味で、こういう質問をさせてもらった」。未知の世界だったプロ球界が、少しずつ現実的に感じられていった。

 前夜は夜中の2時まで野球部主将と副主将のシェアハウスでコアラのマーチを食べながら、仲間にお祝いしてもらった。そしてわずか2時間の睡眠後、朝4時には起きてテレビ出演。赤い目で「頭が働きません」と苦笑いしながら、その後も分刻みのスケジュールをこなした。

 一夜にして全国の注目の的になった。林本部長から「私生活に気をつけるように」と老婆心のこもった言葉ももらった。だがその点では田中は揺るがない。「周りの反応が変わっただけ。人生が変わったとまでは思いません。今までどおり普通に生活したいと思う」。地に足が着いている。京大出身初のプロ野球選手誕生に向けて、着実に1歩前進した。【竹内智信】