ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表メンバー28人が20日、発表され、守護神候補だった浅尾拓也投手(28)が落選した。右肩痛の不安を解消できず、この日の紅白戦登板も回避した。右肩の状態は深刻で、近日中に名古屋市内の病院で精密検査を受ける予定。3月29日のシーズン開幕もピンチに陥った。

 WBC守護神の本命候補が、1球も投げずに去った。最終メンバーを決める紅白戦。投手交代のアナウンスで、浅尾の名前が呼ばれることはなかった。当初は1イニングを予定していたが、右肩痛の不安を解消できず登板を回避。結局、宮崎での合宿中に1度も実戦登板できず、無念の落選が決まった。

 浅尾

 メチャクチャ悔しいし、しっかりと調整できず、本当に情けないです。

 前夜、首脳陣の会談で結論が下された。合宿でのブルペン投球は16日の1度だけ。本調子にはほど遠かった。それでも紅白戦登板には意欲を燃やしていた。最終的には首脳陣から制止された形だ。与田投手コーチは「実戦で投げて、大きなケガにつながる可能性がある。ストップをかけようと判断した」と説明。この日は60メートル前後のキャッチボールや、ダッシュなど軽めの練習メニューで終わった。

 浅尾

 僕は行くつもりでしたが、自分のことを思ってくれたんだと思います。(選手が)足りないとなった時に、自分が選ばれるようにやっていきたいです。

 わずかに残る再招集の可能性に備え、調整を続けると明言した。だが現状はかなり厳しい。事態はWBC落選だけにとどまらず、シーズン開幕すら危ない状況だ。

 右肩の状態は深刻で、近日中に名古屋市内の病院で精密検査を受けることが内定した。思うように回復しない右肩の状態をチェックする方向で、チームに戻ってからもスロー調整を強いられることは確実だ。右肩は昨年、腱板(けんばん)炎を発症して戦線離脱を余儀なくされた箇所。3月29日の開幕まであと37日という時点で、球団首脳は「彼には将来があるし、無理はさせられない」と最悪、浅尾不在の覚悟を示した。

 高木監督

 (右肩が)よくなってきて、今年はというところで、こういうことになって…。中身(実際の状態)はわからん。でも帰ってきて日にちもあるし、考えてやるんじゃないか。

 竜の指揮官もショックを隠せなかった。V奪回に欠かせない浅尾不在の開幕は考えたくない様子。しかも浅尾だけでなく、中日勢は山井と大島も落選と悲報が相次いだ。浅尾の今後の回復具合はもちろん、世界挑戦の夢が破れたサムライたちの心の傷も気がかり。守道竜に試練が訪れた。

 ◆浅尾の異変

 中日の沖縄・北谷キャンプで11日、右肩の張りを訴えて実戦登板を取りやめる。キャンプ初日から皆勤だったブルペン投球も回避。13日に3日ぶりにブルペン入りし21球を投げる。翌14日に日本代表候補合宿地の宮崎入り。15日の初練習では見送ったブルペンに16日に入って21球投げたが本調子には遠かった。18日は投内連係にも加わらず別メニュー。19日は休日返上でキャッチボールなどを行い調整したが、20日紅白戦に登板できなかった。

 ◆浅尾不在の竜投事情

 浅尾が開幕アウトなら中継ぎ、抑え陣は大きな不安を抱える。セットアッパーの代役は田島と山井が筆頭候補だが、2人は昨年チーム最多56試合に登板。不調で代表候補から落選した山井とともに、疲労などの影響が気になる。高木監督は岩瀬に開幕守護神を任せる予定だが、調子が上がらなければ浅尾と2枚の看板倒れの可能性もある。最悪の場合、山内ら先発組からの配置転換や、慶大で守護神を務めたドラ1福谷、ブラッドリーら新たな人材登用の検討を余儀なくされる。