いでよ、救世主侍! 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に臨む侍ジャパンが4日、大阪府内のグラウンドで希望者による練習を行った。大会直前の実戦4試合で1勝3敗と苦しむ中、伏兵の田中広輔内野手(27=広島)は控え選手によるチーム力の底上げを重視。前回13年の第3回WBCで大会中に控えから中心選手となった井端、鳥谷のようなフル稼働を誓った。今日5日、京セラドーム大阪で行われるオリックス戦で、最終準備を整える。

 「トリイバ」のシンデレラストーリーは今も脳裏に焼きついて離れない。13年3月。当時、田中はまだJR東日本の一員だった。「よく覚えていますよ。(自分たちも)そうならないといけない」。あれから4年。今度は侍戦士として、救世主の役割を目指す。

 田中 スタートから出ている選手は、やって当たり前という立場。控え選手が活躍しないことには一発勝負では勝てない。2番手で出る選手とレギュラーの差をなくさないといけない。

 4年前のWBC開幕時、井端と鳥谷はサブプレーヤーにすぎなかった。1次ラウンド3試合で2人が先発したのは1試合ずつ。それでも初戦ブラジル戦の8回に代打井端が同点打を決め、鳥谷も持ち前の選球眼でアピール。2次ラウンド初戦の8日台湾戦で初めてそろって先発起用された。1点を追う9回2死一塁。一塁走者鳥谷が二盗を成功させ、直後に井端が中前適時打。2人は奇跡の同点劇で一躍、脚光を浴びた。

 そんな井端、鳥谷レベルの“野球偏差値”を受け継ぐ男が田中だ。3月1日の強化試合・台湾選抜戦。1点リードの4回1死二塁、自らの判断でセーフティーバントを試みて走者を進めた。次打者は9番小林。確かな意図があった。

 田中 相手は左で大きなカーブを投げる。ショートバウンドになる確率が高かった。1点が欲しい場面。2死でも走者三塁なら暴投や捕逸で1点入る。それを気にして高めに直球を投げてくれば安打の確率も上がる。自分は打っても3割。流れを変えようと思って。

 現状、侍打線は上昇気流に乗れずにいる。小久保監督は1日、田中について「基本は遊撃サブとしての合流だが、松田の状態次第でスタメンもある」と説明した。7日開幕キューバ戦の相手先発は変則右腕が予想される。状況に応じて最善策を体現できる田中の存在感はジワジワ増している。

 4年前、井端は慣れない一塁ミットを手に黙々と守備練習を続けた。鳥谷は本職外の二塁、三塁守備に取り組み、米国移動後も早朝からウエートトレーニングにいそしんだ。結果、開幕時に誰も想像できなかった1番鳥谷、2番井端のコンビが最後は確立された。「どこでも出られる準備はしています」。三塁、二塁も準備し、試合日は早出特打を続ける。田中の姿が2人とダブる。【佐井陽介】

<WBCの救世主>

 ◆第1回メキシコ代表 2次リーグで同組に。日本はアメリカ、韓国に惜敗し1勝2敗で2次リーグ終了。敗退の空気が充満した。しかしメキシコが、2次リーグ最終戦でアメリカを破る金星。日本とともに1勝2敗で並んだ。大会規定により、失点率の少なかった日本が勝ち上がり「アナハイムの奇跡」と呼ばれた。

 ◆第2回栗原健太 韓国との第2ラウンド1位決定戦で、村田が右太もも裏を肉離れ。出場不能となった。高松でオープン戦中の栗原(当時広島)にすぐさま連絡が入り、翌日には米国入り。決勝の韓国戦にスタメン出場した。

 ◆第3回能見篤史 初戦のブラジル戦に4番手で登板。第2ラウンド初戦の台湾戦は先発に抜てきされ、王建民と緊迫した投手戦を展開した。準決勝プエルトリコ戦では2番手で登板とフル回転。