伊勢ケ浜親方
伊勢ケ浜親方

 伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)のオススメは、ちょっぴりぜいたくな逸品だ。福岡の繁華街・中洲の那珂川沿いにある「自己流初代家元 すてーきはうす コックちゃん」。現役時代から九州場所のときには必ず立ち寄る名店で、創業48年のレトロな店内の壁には初代若乃花、輪島、プロ野球の清原和博、高橋由伸ら、豪華な顔ぶれの写真やサインが並ぶ。主人は帝国ホテルで修業した後、26歳で独立。席数はわずか8席で、完全予約制、1日1組限定というプレミア感からも、ワンランク上の雰囲気が伝わってくる。

主人の井上寿晟さんは人生経験豊富でバリバリ現役の74歳!
主人の井上寿晟さんは人生経験豊富でバリバリ現役の74歳!

 食べ方には、主人のこだわりが詰まっている。食事のメニューは無く、厳選された九州の和牛と野菜(1万~1万5000円、仕入れ値によって異なる)を、赤白のワインといただくのが基本スタイル。主人が一貫して言うのは「食事とワインのマリアージュ(結婚)」だ。まずは5種類の野菜を使ったサラダ。こちらをほおばり、2、3口かんだところで白ワインをグイッ。口の中で絡めると、驚くほど野菜の甘みが引き立つ。

地元の野菜は味付けなしでも素材の甘みが存分に味わえる
地元の野菜は味付けなしでも素材の甘みが存分に味わえる

 お次はいよいよ、肉の登場だ。親方のオススメは、細かく柔らかい肉質で、霜降りだが赤身の味がしっかりしている糸島牛のヒレ肉。「(主人が)自分で熟成させて、出してくれる。口の中で溶けるんだよ。本当においしいよ」と、普段は険しい表情も思わず緩んでしまうほど美味だという。最近はやりの「熟成肉」。それを創業当時から作っており、独自の技術でうま味を凝縮。軽く焼いて秘伝のしょうゆとワサビ、塩でいただくと、ジューシーなうまみが口いっぱいに広がる。こちらは赤ワインとマリアージュ。肉本来のうま味を堪能することができる。食材に適した調理が施された15種類ほどの野菜も添えられ、舌鼓を打つこと間違いなしだ。

キメが細かくサシが入った肉は、まさに絶品
キメが細かくサシが入った肉は、まさに絶品
秘伝のしょうゆにくぐらせて、わさびをたっぷりと
秘伝のしょうゆにくぐらせて、わさびをたっぷりと

 シメのガーリックライスも見逃せない。「こここで食べたら、他のところじゃチャーハン食べられないよ」(親方)という味は、シンプルだが香ばしくて箸が止まらなくなる。ワインはすべてフランスワインで、価格は1本1万円から(要相談)。80~90年代の品ぞろえも豊富だ。主人の自宅地下にはワイン専用の貯蔵庫があり、さらに約5000本がストックされている。最古で1850年ごろのものもあるという。歯切れのいい主人のトークもさえ、大満足でした。

にんにくと肉の端切れだけで、癖になるガーリックライス
にんにくと肉の端切れだけで、癖になるガーリックライス

 「俺はグルメだから、おいしいところはたくさん知ってるよ」と言う伊勢ケ浜親方がまっさきに太鼓判を押した一品は、一度食べてみる価値あり。九州場所で優勝した横綱日馬富士も訪れたことがあり、過去には店内でプロポーズした人もいたとか。記念日や勝負時に一肌脱ぐなんて、どうでしょう?【桑原亮】


◆自己流初代家元 すてーきはうす コックちゃん

住所:福岡市博多区中洲4丁目1-9 ナイトプラザビル中洲2階

電話:092・281・5222