あらためていまだ辰吉人気の高さを知らされた。4月16日の大阪での世界戦。滋賀生まれで南京都出身の世界王者山中がメーンだったが、開場前から会場前は人だかりがしていた。辰吉の次男寿以揮のデビュー戦目当てファンも多かった。

 全くの素人だが、セミから3試合前に抜てきされ、まるで世界戦のノリだった。結果はアマ経験もある相手から初回にダウンを奪い、2回KOに仕留めた。時にはノーガード、結構パンチももらって、父をほうふつさせる場面もあった。

 大阪帝拳ジム期待の18歳は鮮やかに4回戦デビューを飾った。目標は世界王者と大きいが、経験はないだけにスタートしたに過ぎない。現時点では、まずは日本王者目標あたりが現実的だろう。

 辰吉の2試合前に、もう1人プロデビューした。本田会長が「秘密兵器」という名門帝拳ジム期待の実力派新人。ライト級正木脩也は速い左ジャブでペースを取り、強烈な左ボディーがよく、最後も左ボディー。続く右アッパーは必要なく1回KO勝ちした。

 相手はタイの選手だった。地元大阪でのデビュー戦だったが、顔が売れていて日本人の相手がいなかった。興国高で国体を制し、関大ではリーグ制覇に貢献した。アマで54勝(20KO)8敗の実績から、6回戦のB級デビューだった。

 母知佐子さんが辰吉ファンだったこともあり、小6で大阪帝拳ジムに通い始めた。プロを目指そうと昨年11月に関大を3年で中退して上京。練習していたアマジムの伝で帝拳ジムに入門した。アマはポイントで勝てるため、KOは少ない。葛西トレーナーにつき、右ストレートを鍛えるとパンチ力が増した。

 トランクスのおしりには「Okann」のワッペンがあった。母が姉と心斎橋で好み焼き店を営む。「出来は50点。こんなところでこけていては先はない。目標はリナレス。稼いでおかんに楽させたい」。

 最近はアマ上がりが増え、現役世界王者も内山、山中、三浦、井上、井岡がいる。一方でたたき上げの世界王者はボクシングの面白さの一つ。2人の出世争いはどういう結末になるか。楽しみたい。【河合香】