大相撲の大関琴ノ若(26=佐渡ケ嶽)が、横綱照ノ富士から金言を得た。19日、神奈川・川崎市で行われた春巡業に参加。朝稽古では小結錦木と5番、前頭竜電と3番と、計8番取って全勝。夏場所(5月12日初日、東京・両国国技館)に向けて、仕上がりの良さを披露した。その後、錦木に胸を借り、ぶつかり稽古を行っている最中に、土俵下の照ノ富士から声を懸けられ、稽古を一時中断して耳を傾けた。さらに稽古が終わってからも、土俵下で照ノ富士の言葉を聞き入った。

稽古後、琴ノ若は、照ノ富士から稽古中に懸けられた言葉は「(ぶつかり稽古で)もう少し足幅を開いた方がいい」というものだったという。押す際に、より相手に力が伝わる方法を、的確にアドバイスされた。土俵下での内容は「秘密です」と、冗談めかしてはぐらかそうとしたが「相撲の取り方というか、流れというか」と、一端を明かした。「上手の取り方などか」と問われると「そういう系統の話ですね」と答えた。

琴ノ若は十両土俵を含めて、照ノ富士には過去8戦全敗と、まだ勝ったことがない。そんな年上の横綱からの直接指導に「ありがたいですね。アドバイスをいただいたので、それを実戦で生かせるようにしたい」と、感謝しつつ、金言として夏場所への糧にするつもりだ。

その夏場所は、元横綱の祖父から受け継ぐことになる「琴桜」への改名を予定している。「琴桜」のしこ名が入った新たな化粧まわしが、製作予定であることを明かしたが「まだできあがってはいないです。(デザイン案は)何個か聞いています。でも(贈呈してくれる)企業さんにとって、その企業さんらしいデザインで見やすいというのが、1番いいと思う」と、しこ名にちなんだ、桜を入れたデザインなどには全くこだわっていないという。また、浴衣地などとして使われる反物は「琴桜」で製作を予定していることも明かした。

夏場所以降は「琴桜」として、琴ノ若としては果たせなかった初優勝を目指すことになる。依然として、割には入っておらず、相撲を取る稽古を再開していない照ノ富士らとは対照的に、琴ノ若はここまで順調に仕上げてきた。巡業前半は前頭平戸海や豪ノ山ら運動量の多い相手との稽古が多かったが、この日の2人は腰が重く、どっしりとした相撲を取るタイプ。「大きさとか取り口も変わってくる」と、さまざまなタイプにも対応できるようにしているなど、調整も本格的になってきている。

ただ、番数を増やすなどの今後の計画については「体の状況と、周りの状況(他の力士の疲れ具合など)による。その時に応じて、やりながら決めていきたい」と、臨機応変な姿勢。順調な仕上がりに、照ノ富士からの金言も加わり、夏場所は優勝候補の本命として迎える可能性は十分だ。