黒のカリスマ、蝶野正洋(52=フリー)が約2年ぶりのリング復帰を発表した。蝶野と言えば、今や年末恒例のTV番組「ガキの使いやあらへんで」のシリーズで冷徹なお仕置き役として若者の人気を集めているが、プロレスラーを引退したわけではなかった。

 今回の復帰も、プロレスラーとして現場に戻るというより、蝶野がプロレスの一線を離れてから行っている慈善活動の一環だ。蝶野は、14年7月に、一般社団法人ニューワールドアワーズスポーツ救命協会を立ち上げた。

 きっかけは、同期の故橋本真也さんの死や、ノアの故三沢光晴さんの事故死だった。競技者が倒れたとき、救急車が到着するまでの空白の時間が生命を大きく左右することを知り、アスリートとして応急手当てを知ることが大事だと感じ、10年に普通救命講習を受講した。その後、講習の受講推進やAEDの普及を救命協会で進めている。

 活動を続けるうちに、消防団を中核とした地域防災力の充実強化にも関心を持ち、その広報活動にもたずさわった。今回のリング復帰も、広報活動の一環だ。「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法案は、15年12月に国会で可決されたが、そこから進んでいない。熊本の震災もあって、法案の実施を一刻も早く進めないといけないと感じた。だから、(広報活動で)大きなイベントをやるんであれば、リング持って行ってやりますよということになった。活動のためなら、喜んで客寄せパンダをやりますよ」と蝶野は説明した。

 過去にはプロレスイベント「FIGHT&LOVE」と、11年9月に仙台で、13年8月には福島県いわき市で開催している。リング復帰は14年4月以来だ。「リングに上がる準備はしていなかった。秋ぐらいにできるように体をつくりますよ。まわりのレスラーには、救急救命講習に行ってもらって、おれが倒れたら蘇生してもらいます」と、蝶野は笑った。

 闘魂三銃士、nWoで新日本の黄金時代を築いた。プロレスでも、「ガキ使」でも、こわもての悪役のイメージが強いが、素顔は正反対。蝶野の人を助けたいという地道な活動には頭が下がる。現在は、団体に属さないフリーのレスラーや、ボクシングの元王者とも連係して活動の仲間の輪を広げている。「組織にいると、その中で社会貢献活動をやっていけるけど、フリーになったら何かやるために、どうすればいいか、何をしたらいいか分からない。団体に属さないアスリートに、オレらは声をかけて広報の協力をお願いしている。スポーツに限らす、いろんなジャンルに呼びかけ、協力して、どんどん広げていきたい」。活動の輪は、日本チェーンドラッグストア協会や、一般財団法人日本ヘルスケア協会などの協力も得て、確実に広がっている。【プロレス担当=桝田朗】