5月8日に2度目の防衛に成功したWBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(23)の一夜明け会見。今後のプランについて聞かれた大橋秀行会長の答えが興味深かった。「体重的にはバンタムかスーパーバンタムに上げたいのが本音だが、あと1年ぐらいならスーパーフライで待てる」。「待つ」相手は、無敗で3階級制覇を果たしたWBCフライ級王者ローマン・ゴンサレス(28)にほかならない。2人の“怪物”の未来がどのように交差するのか、想像を膨らませてみた。

 まずは階級。これは大橋会長の言葉からもスーパーフライ級以外にないだろう。14年9月に3階級制覇を達成したロマゴンは、4月にフライ級王座のV4に成功。そろそろスーパーフライ級で4階級制覇を目指す戦いをスタートさせそうな雰囲気だ。一方の井上は、14年末にライトフライ級から2階級上げたが、現在も減量は楽ではない。試合実現のためには「井上がスーパーフライ級にいる間」が第1条件となりそうだ。

 舞台は王者同士の「統一戦」が有力か。階級を上げてくるロマゴンが、4団体で最も高い評価を受ける井上にいきなり挑戦するとは考えにくい。体重への適応という意味でも、まずは他の3団体の王者への挑戦を優先するだろう。現時点ではWBC王者クアドラスの名前もうわさされているが、ロマゴンの4階級制覇のタイミングも、試合成立の重要な要素と言えそうだ。

 開催地にも注目だ。米老舗ボクシング誌「リング」が選ぶパウンド・フォー・パウンド(全階級を通じた最強)ランキングで、ロマゴンは1位、井上も9位に名を連ねている。当然ながら、世界が注目する一戦を日本で見たいと願うファンの声は大きい。だが、米国開催の魅力も捨てがたい。ロマゴンの活躍で、本場の軽量級への注目度は一気に上がった。そんな目の肥えたファンの前で「軽量級頂上決戦」が行われれば、国内開催以上の大きなインパクトを与えられるだろう。

 大橋会長は、ミニマム級王座22度防衛の記録を持つリカルド・ロペスと対戦した経験を踏まえ、こう締めくくった。「同じ時代に伝説の人間がいれば、戦わなければいけない」。ロマゴン45戦全勝(38KO)、井上10戦全勝(8KO)。両雄がリングに並ぶ瞬間を待ちたい。【奥山将志】