15日間、連日の満員札止めとなった大相撲秋場所は、鶴竜(井筒)の昇進9場所目での横綱初優勝(通算では9場所ぶり2度目)で幕を閉じ、1人横綱の面目を保った。

 しばしの休息を経て、力士たちには再び、相撲漬けの日々が始まる。秋巡業がそれだ。満員御礼の数とともに、巡業の年間日数も、あの若貴フィーバー時代以来という盛況ぶり。秋巡業もビッシリとスケジュールが埋まっている。7日に東京をたち、翌8日の栃木・宇都宮巡業を皮切りに、最後となる25日の山口・下関巡業を終え、九州場所の開催地・博多に入る。関東-甲信越-北陸-近畿-四国-中国-九州と巡る、その移動距離は約3000キロ。19日間で休養日は15日(長野市)だけという、やせるヒマもない(?)忙しさだ。

 本場所開催地以外に住む地方のファンには、1年に1度のお楽しみ。どんな不人気に陥り冬の時代になっても支えてくれた古くからの勧進元、あるいは人気上昇にあやかろうという新たな主催団体があるかもしれない。一時期のブームだけに終わらせず、その新規の後援団体をつなぎ留めておくためにも、稽古や取組で本場所さながらの魅力を伝える必要がある。

 さて、その巡業で最近、さまざまな勧進元の新たなアイデアが見受けられるという。私も8月の夏巡業は3会場しか足を運べなかったが、それでも2会場で面白い試みがあった。8月13日の福島・郡山巡業であったのは、尾車巡業部長(元大関琴風)も「私も初めて。今後も勧進元の要望があれば、時間や進行時間にもよるがやりたい」という、幕下以下の力士によるトーナメント。幕下、三段目、序二段に7万円、5万円、2万円の優勝賞金と30キロの地元産のお米、また出場力士全員に数千円ではあるが出場料も出た。

 また翌14日の栃木・足利巡業では、相撲女子席「“スー女”席」という女性専用のいす席を設置。昼休みには人気力士・遠藤との記念撮影もできるという、プレミア付きのチケットが販売されていた。勧進元のホームページによれば「地方巡業初の試み」という。久々の相撲人気到来に、本場所を開催する日本相撲協会も、地方巡業を催す勧進元も、あの手この手で集客のアイデアをこらしている。【渡辺佳彦】