フロイド・メイウェザー(38=米国)のすごさはどこか。日本ボクシング界をけん引する大橋秀行氏(50=元WBA、WBCミニマム級王者)。アンタッチャブルといわれた屈指のテクニシャン川島郭志氏(45=元WBC世界スーパーフライ級王者)。日刊スポーツ評論家の2人に、世紀の一戦のテクニック、勝敗の分かれ目、判定結果などを分析してもらった。

 大橋 結果は大方の予想通りだったが、すごさは見せつけてくれた。これだけ盛り上がったのは、ボクシングには歴史があるから。誇りに思う。

 川島 お金のことでいろいろ取り上げられたが、試合を見た一般の人がどう思ったか。お互い無傷。もう少し濃い内容、打ち合いを期待したが…。想像通りになってしまったが、2人が強いからこそとも言える。

 大橋 確かに物足りなかったかもしれない。後半は手数も少なかった。その中で中間距離での戦いには興奮させられた。フェイント、読み合い、駆け引きなど、一級品のテクニックを見せてもらった。

 川島 パッキャオがどう崩すかだったが、メイウェザーが勝ちに徹した。パンチをもらわないのはアマの時から。やはりうまいし、キャリアを生かし、ゲームメークしていた。

 大橋 メイウェザーはロープを背にしても、よける方向とか研究していた。何しろ瞬間でいなくなってしまう。一瞬の移動のスピードはマネできない。打たせないから無敗でいられるし、自信になっている。

 川島 足を使わずに受けて立った。左構えに右ストレートは有効で、浅くても的確に当てて、リズム、調子に乗させなかった。年齢もあり、省エネのセオリー通りの作戦だった。

 大橋 パッキャオがスピードでもっと手玉に取られると思ったが、前半は良かった。4回に左ストレートが当たった時は声を上げてしまった。あとが踏み込めなかった。マルケスに倒されたトラウマがあった。

 川島 今は毎回採点を振り分けるラウンドマスト方式になった。メイウェザーは普段左肩でガードするが、今回は距離を保った。攻められても当てさせず、クリンチも使ってしのいだ。逆に数は少なくても右を当ててジャッジにアピール。今のボクシングに一番合っているし、ボクシングを知っている。

 大橋 再戦の話もあるらしい。ともに攻撃的にいけば、もっと面白くなる。

 川島 余計に警戒して同じ展開だと思う。メイウェザーには誰も勝てない。

 ◆大橋秀行(おおはし・ひでゆき)1965年(昭40)3月8日、横浜生まれ。横浜高でインターハイ優勝。専大中退でヨネクラジム入りし、85年デビュー。86年に7戦目で世界挑戦はKO負け。90年に3度目の挑戦でWBC世界ミニマム級王座獲得。防衛1回。92年にWBA世界同級王座獲得。右ファイター。94年大橋ジムを開設し、世界王者4人育てる。09年日本プロボクシング協会会長に就任。

 ◆川島郭志(かわしま・ひろし)1970年(昭45)3月27日、徳島県海部郡海陽町生まれ。海南高で鬼塚、渡久地を破ってインターハイ優勝。88年にヨネクラジム入りしてデビュー。94年にWBC世界スーパーフライ級王座獲得。6度防衛。左ボクサー。00年に川島ジムを開設。