WBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(22=大橋)が、進化した左で復活をアピールする。同級1位パレナスとの初防衛戦(29日、東京・有明コロシアム)に向けた20日、横浜市内のジムで練習を公開した。昨年末の王座を奪取した試合で右拳を負傷も、1年間の戦線離脱中も左手1本でスパーリングを続けるなど、新たな武器を作り上げた。1日に結婚した新妻に必勝メニューの「参鶏湯(サムゲタン)」を用意してもらい、最後の調整に入る。

 ミットを打ち込む拳に力がこもった。井上は約1時間半のメニューで、アッパー、ワンツーなど体重の乗ったパンチを次々と放ち、右拳の不安を一掃した。会見では、詰め掛けた約50人の報道陣を前に「1年待ったし、準備は100%出来ている。とにかく早く試合がしたい」と引き締まった表情で言った。

 単なる復帰の舞台にするつもりはない。スパーリングを再開した4月から、右を使い始めた9月まで、左の強化に専念。強く、速く、スムーズに打つことを意識し、期間終盤には世界ランカーのパートナーを片手で圧倒するまでになった。24勝(21KO)と好戦的なパレナスとの一戦に「すべてにおいてコントロールしたい。タイミング良く当たれば左で倒せる自信もある」。昨年末に世界を驚かせたナルバエス戦から、さらなる上積みも約束した。

 今後はリミットまで残り3キロに迫った減量が中心となるが、心強いサポートも得た。今月1日に、高校時代の同学年・咲弥さん(21)と結婚。井上家での同居期間も長かっただけに、父真吾トレーナー特製の「参鶏湯」のレシピも熟知する。すっぽんスープに、しょうが、にんにくで味付けし、鶏肉、ひじき、ネギ、チンゲンサイなどの具を入れた必勝メニューで、井上も「作ってもらおうと思います」とおねだりする構えだ。

 海外のプロモーターからも試合出場のオファーを受けるなど、丸1年ぶりのリングには国内外から熱視線が送られる。来年中の米国進出もうわさされる22歳は「いろいろな選択肢が考えられるように、それなりの試合をします」。たまったうっぷんは、待ちこがれたリングで晴らす。【奥山将志】