川島ジムに16年目で初の王者が誕生した。同級1位有川稔男(31)が同級王者新藤寛之の初防衛戦で王座初挑戦。

 初回に接近戦で左フックを浴びせてダウンを奪った。その後もパワーで接近戦に持ち込んでボディーなどをねじ込んだ。5回の公開採点で3-0とリード。その後は距離が空くとリーチのある新藤に反撃も食ったが、時には雄たけびを上げて相手を押し込んだ。10回にコーナーに追い込んで連打を浴びせると、相手陣営がタオルを投入。10回1分46秒TKO勝ちで新王者になった。

 川島会長は有川を「変わり者」と評する。東大を中退して、自衛隊のレンジャー部隊に合格した。入隊前に体を鍛えようと入門すると「これだ」と方向転換。昨年の最強後楽園でMVPと指名挑戦権を獲得した。「経歴は関係ない」というが異色に違いない。前回を含めて4度右手を骨折し、今回も2度手術を受けてスパーすらできなかった。「勝って王者になるのは当たり前。KOと骨折しない2つが目標だった」が、中盤でまた折ってしまった。右の鼓膜も破れ、8回には右手をついたがスリップダウンの判断にも救われた。「運も良かった。最初のダウンで楽に戦えた」と有川。「高いところが好き」と高層ビルの窓ふきのバイトをしている。

 元世界王者の川島会長は00年にジムを開設した。これまで2人が3度日本王座に挑戦も勝てなかった。「やっと。ありがとうと言いたい。勝ったので合格」と笑みが耐えなかった。