プロレスリング・ノアは1日、IT企業「エストビー株式会社」(本社・東京)に事業を譲渡すると発表した。実質的な身売りで、エストビー社の不破洋介社長がノアの新社長に就任し、田上明社長は相談役に退く。故三沢光晴さんが00年に創設したノアは、近年観客動員の低迷などで経営危機に陥っていた。今後は、エストビー社の下で再建を目指す。

 ノアは創始者である三沢さんが09年6月に試合中の事故で亡くなってから、徐々に低迷していった。かつては、日本武道館を満員にしていた集客力も、エース小橋建太の引退や、現全日本の秋山準や、WWEに入団したKENTA(現イタミ・ヒデオ)ら大物レスラーの大量離脱で低下。最近では、新日本から鈴木みのるら人気選手を借りて、何とか観客の減少を食い止めようとしていた。

 しかし、大阪、名古屋など地方の大都市での興行もカード次第で集客に結びつかない。日本テレビなどからの放送権料も縮小されたという。関係者によると、経営状態もトントンか、それ以下という厳しい状況が続いていた。そんな中、数年前からスポンサーを探し、元全日本社長の内田雅之氏がエストビー社との仲を取り持つ形で、事業譲渡が決まった。

 前日の10月31日には、エストビー社の不破社長と、ノアの田上前社長が、東京・有明のノア事務所に、選手、社員約40人を集め、今回の事業譲渡を説明した。内田氏は会長に就任するという。社名も変更されず、すでに決まっている興行は予定通り行われることから、選手らの動揺はなかったという。

 プロレス界は、最大手の新日本プロレスが、06年にユークス、さらに12年にブシロードの子会社となり、団体の再建を果たしている。ノアの今回の身売りが、同じような再建の起爆剤となるか。新経営陣の手腕が注目される。【桝田朗】

<プロレス団体の身売り>

 ◆新日本 06年にゲーム会社のユークスが、アントニオ猪木氏から株式の譲渡を受け、新日本を完全子会社化。さらに12年にはユークスから、同じくカードゲーム会社のブシロードが全株式を買い取り、新日本を子会社にして団体の再建を果たした。

 ◆全日本 13年にスピード・パートナーズ社(八丁堀投資)の白石伸生社長が全日本の全株式を取得しオーナーになる。14年5月に八丁堀投資が破産し、同年6月に秋山準が社長として新法人を設立。その後、出資企業の撤退などがあったが、現在も秋山体制が続いている。