WBA世界ライトフライ級王者田口良一(30=ワタナベ)が引き分けで王座を守った。同級3位カルロス・カニサレス(23=ベネズエラ)に先手をとられた後は足を使われ、後半に有効打も捕まえきれず。判定は三者三様で5度目の防衛に成功し、ジム唯一の世界王座は死守した。

 「採点はどっちに転んでもおかしくなかった」。田口は素直な気持ちを吐露した。苦闘の末の引き分け防衛に笑顔はなし。「やりづらかった。試合巧者だった」と相手をほめた。「ベルトが手元にあるのは大きい。収穫はそれだけ」。負ければジムに6年ぶりで世界王者が不在となる危機だけは救った。

 序盤に先手をとられて劣勢になった。3回からは逆にプレスをかけて出たが、最後まで足を使われて捕まえられなかった。グルグルとリングを回られて「あのサークリングで勢いを止められ、連打にいけなかった。ジャブもボディーも出なかった」。7回に左フックでぐらつかせ、後半は再三の有効打で上回り、辛くも引き分けに持ち込んだ。

 今回は相手が自由に選べる選択試合で、候補は6人ほどいた。田口は「最強の相手とやりたい」と迷わずにカニサレスを選んだ。16戦全勝で13KOのうち12が3回以内。「接近戦でバチバチになると思った」とファイター対策を重点に練習してきた。それが早めに足を使われて作戦が狂った。

 石原トレーナーも「採点は厳しくイーブンかと思った」と振り返った。最終12回は全力で攻めたがクリンチされ、2度、3度、4度とホールディングされた。体負けしないように相撲トレも導入したが振りほどけず。観客は大ブーイングだったが、この回の攻勢がなければ1-2の判定負けとなるところだった。

 日本のジム所属でV5達成は、大場、ガッツ石松、鬼塚らに並ぶ歴代15位で21人目となった。「すごい人ばかり。区切りで意識している」と臨んだリング。今年3度目の防衛戦で、引き分けでも節目にたどり着いて年越し。「ギリギリの合格ライン」で王者4年目に入る。

 八重樫に加えて田中も王座獲得でこの階級では日本人王者が3人になった。「これも経験。やることはいっぱい。地道に練習していきたい」。激戦区の最強を目指した戦いに生き残ったことが、一番の収穫だった。【河合香】