ボクシングのロンドン五輪金メダリストでWBA世界ミドル級2位村田諒太(31=帝拳)が3日、都内で会見を開き、5月20日に東京・有明コロシアムで、WBA1位(暫定王者)アッサン・エンダム(33=フランス)とWBA正規王座決定戦を行うと発表した。村田は報道陣の取材に「アマチュアの時に、辞めなくて良かったと今になって思う。あの時点で辞めていたら、見ることが出来なかった世界を見ることが出来た」と感慨深げに語った。以下、主な一問一答

 -五輪金メダリストとして世界戦に臨む気持ち

 正直、そこは意識していないところですけど、いつまでも金メダリストの肩書きはついてくる。多くの方にサポートに支えられてキャリアを進めている。恩恵に結果で応えたい。

 -道のりは長かった? プロに適応できたと感じた時期は?

 長かったか短かったかというと、いい時期に迎えられた。人生においても、いい経験だったと思う。自信を深めたのは、16年の4試合です。

 -尊敬するフェリックス・トリニダードやバーナード・ホプキンスらも巻いたミドル級のベルトに挑む

 たまたま、サポートしていただいたおかげで、ここに来ているだけ。ビッグネームは、ベルト以上になしえたことが大きい。ただ挑戦するだけで、僕の中で比べることが出来ない、というのが正直なところ。

 -強化したいポイントは まともにパンチを、もらわないようにしたい。パンチの種類的に、ガードの上から、弾き返されることはないと思う。もらわない上で詰める練習はしたい。(エンダムは)長い距離の試合にしたら強いので、そのあたりはやっていきたい。

 -エンダムは2回、五輪に出ている。

 五輪は競技的に全く違いますので、参考にはしないですね。五輪予選の映像を見ましたけれど、81キロで出ていた(笑い)戦い方も違うと思う。

 -エンダムのスタイルで印象的なところは

 足が止まらないところですね。あとは倒れても起き上がって、常にファイトを続けますので。ポイントを取っていくのがうまいですよね。相手のリズムに乗せないこと。1回倒したからといって、気を抜かないことは重要。6回倒れて、最後までやる…ちょっと神経を疑いたくなりますね(笑い)

 -エンダムを6回倒したクイリン、4回倒したレミューの試合は参考にするか

 参考にする部分は、もちろんあると思います。倒し方うんぬんとかではなく、気を抜く時のタイミングとか、特徴があると思うんですよ。どういうタイミングで集中力が切れるとか、パンチの振りが大きくなるとか、嫌がるかというのは(過去の映像を)見ながらやっていきたいですね。

 -どんな展開に持ち込みたい?

 プレッシャーをかけて、ミドルレンジからショートレンジで僕のパンチを打ち込む。そこが僕の方が強いと思うので、1番のポイントだと思います。12回、あそこまで足が止まらない選手はミドル級でなかなかいないと思う。それは、させたくない。(試合は)単純な構造になると思います。ベースとしては前に出て、いかにパンチを当てられるか? 僕自身、実際、プロのキャリアにおいて、このレベルの選手と戦うのは初めてなので、試合をやってみないと分からない。

 -気持ち的に、アマからプロになるのに変えなければいけないというのが自分の中であった? 

 今まで、いろいろな練習をした中で捨てるものも拾うものもあった。だから僕の中で無駄なキャリアはないと思っているので。いい過去なんです。やはり薄いグローブで、ノーヘッドギアで殴られて、どこまで耐えられるか、というのはあった。経験してみないと分からないことじゃないですか? 僕もアマチュアで10年以上戦ってきて…いい経験だったと思います。アマチュアの時に、辞めなくて良かったなと今になって思うんです。というのは、こういうプロの世界とか、いろいろなボクシングの世界、世間を見ることが出来た。あの時点で辞めていたら、見ることが出来なかった世界。ボクシングが好きな1人間として、ここまで長くやることが出来ていることに対して、うれしく思います。

 -ミドル級のトップ戦線が見えている?

 ボクシングはエンディングとオープニングが、いつきてもおかしくない競技。あいつは先を見据えて頑張っているから強いんだとなるかもしれないし、負けてしまったら先のことばかり考えているから足元をすくわれたんだと言われる。結果論だと思いますが、気持ちの中では、その先のことも考えたいと思います。

 -過去、日本のメダリストでプロの世界チャンピオンになった選手はいない。最初になるんだという意気込みは

 それは、結果としてついてきてくれれば良くて、歴史に対する挑戦という気持ちは、実はあまりなくて。試合を組んでもらうのに、いろいろな方に尽力していただいた。僕自身、日本でミドル級の、自分自身のタイトルマッチが出来るなんて、思ってもみなかったことなので、舞台を組んでくださった皆さんに、まず恩返しをする…それだけですね。その後、記録的なものになればいい。(記録のことは)頭の隅にも考えていなかったですね。

 村田は、記者の質問に1つ1つ、丁寧に答えつつ、合間に笑みを浮かべた。待望の世界戦が決まった喜び、感謝がにじんでいた。【村上幸将】