「激闘王」八重樫に対しては、「試合は面白いやね。すげえ打ち合いやるね」。その代償の試合後の腫れ上がった顔が有名だが…。

 たけし 今日見たら治ってないのかと。もともとこうだったんだなあ。

 八重樫 そうなんです(笑い)。僕は井上のような余裕はないので…。

 たけし 今度の相手(メリンド)は精神的に弱そう。早めに押し込めば諦めるんじゃないかな。

 八重樫 下がらせ、ぐちゃぐちゃにしてやります。

 映画では「リアル」を追求してきた。ハリウッド映画を挙げ「ヘビー級の打ち合いなんかあり得ない」。1発当たれば倒れる。監督としてこだわってきた。

 たけし 相手は血だらけで倒れていて、片っぽは手を挙げている。そういう瞬間が1歩間違えば待っているのを前提に打ち合いしてる。昔の武士道みたいに一発間違えばたたき殺される真剣勝負だからね。

 その言葉に2人の王者も応じた。

 八重樫 試合は斬り合いの場で、やる覚悟も、やられる覚悟も作って上がらないととは常々思ってます。

 井上 自分もそういうヒリヒリ感、ピリついたリングは常に何があるか分からない場所なので、緊張感を持ってやっています。

 たけし オレも漫才では絶対になめなかったよね、いくら軽い客でも。笑うって分かっていても。井上選手も格下で勝てると思っても、緩んでないと思うよ。1発入ったら取り返しがつかないからね。

 「油断大敵」。その言葉に井上は、「甘く見たことはないです」。八重樫は「僕はいつもいっぱいいっぱいですから」。2人の王者には、その心配は無用だった。