体重超過で王座を剥奪された前王者比嘉大吾(22=白井・具志堅スポーツ)が9回1分14秒、TKO負けでプロ初黒星を喫し、日本新記録の16連続KO勝ちも逃した。当日計量を規定体重内でパスし、同級2位クリストファー・ロサレス(23=ニカラグア)と対戦。左ボディーなど軸に攻め続けたが、公開採点でも劣勢となっていた9回、具志堅用高会長(62)の棄権要請でレフェリーストップとなった。日本ボクシングコミッション(JBC)による処分を待ちながら、比嘉は長期休養に入る。

 力尽きた、ふらついた体で、比嘉は頭を下げながらリングから下りた。WBCの公開採点でジャッジ3人中2人がロサレスを支持した8回終了時、具志堅会長からJBCに棄権の要請が入った。接近戦で打ち合っていた途中に試合はストップ。控室に戻ると涙を流し、そして泣き続けた。「ごめんなさい」と同会長に謝罪。「心配するな、よくやった」と褒められ、心が救われた。

 当日朝の計量で、試合実施のために設定された55・3キロを下回る54・7キロでパスした。しかし脱水症状になるまで極限まで追い込んだ肉体のダメージは大きかったが、周囲の心配を振り払い、自ら出場を直訴。落ち込んだ気持ちを奮い立たせるため、通常よりもウオーミングアップし、顔を紅潮させてリングに立った。試合後は「何も出てこない。改めて話します。ごめんなさい」とだけ話した。

 当日朝に計量パスした後には「世界王者にもかかわらず、計量をミスして申し訳ありません。ロサレス陣営に申し訳ないです。ボクシングファンのみなさま、プロモーションの方々に謝りたいです」と深々と頭を下げた。リングで拳を交え、来日した挑戦者に敬意を表したかったようだ。具志堅会長も「2~3回で止めることも考えていた」。ギリギリの状態だった。

 体重超過の原因について具志堅会長は「今回(の減量ミス)は短期間だったこと。体重を落とすにはもう少し余裕が必要だった」と分析。その上で「2カ月ぐらいで試合をさせた本当に私の責任。甘かったです」とあらためて謝罪した。今月中にもJBCから体重超過に対する比嘉への処分が決まる見通し。長期間の出場停止も想定されるため、同会長は「今後のことは全く考えていない。JBCの処分があるので、しっかりと決定を待ちたい」と神妙な面持ちだった。

 まずは長期休養で疲労が蓄積し続けた心身を癒やす方向。22歳と若いものの、試合できない状態が続けば誰でも実戦感覚は鈍る。比嘉の再起は、いばらの道になりそうだ。【藤中栄二】