ドラディションの藤波辰爾(54)が、古巣の新日本プロレスを訴えていたことが10日分かった。藤波は06年3月の取締役会で決議された退職功労金が支払われなかったのは利益の侵害に当たるとして、6月2日、総額約5000万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁八王子支部に起こしていた。かつてはスターレスラーとして支えた団体と、法廷闘争となる異例の事態となった。

 藤波は06年3月の取締役会後、同年6月に34年間在籍した新日本を退団した。同社には役職や在職年数に応じ、退職する役員に慰労金を支払う規定があったが、業績悪化を理由に同取締役会で規定を廃止。だが、藤波側顧問弁護士によると、藤波に関しては「過去の功績に応じて、従来の役員退職金を考慮して支払う」という決議が全会一致で可決されたという。

 しかし昨年4月の株主総会で筆頭株主のゲームソフト会社ユークスの反対で、支払いが否決。その理由について新日本側は「将来にわたり経営に協力することが前提だった」と主張。その後も「贈呈に条件はついていない」とする藤波との話し合いは平行線をたどり、6月2日、藤波が提訴に踏み切った。

 この日、藤波は「弁護士に一任してあるので」とノーコメント。代理人の弁護士は「筆頭株主のユークスと新日本が共謀して、藤波さんの利益を侵害している。退職金規定を計算し、約5000万円と試算した」と主張した。一方、新日本は「今後の裁判案件につきノーコメント」。ユークスも「(藤波さんの主張する)内容については今後裁判で明らかになると思います。現時点でのコメントは控えさせていただきます」と話すにとどまった。

 提訴した藤波だが、今年1月の新日本・東京ドーム大会には参戦。社長を務めるドラディションの選手も、新日本の興行に参戦している。プロレスビジネスでは良好の関係になりつつあるだけに、現場サイドでは「なぜこの時期に」と言う意見も出ている。1回目の裁判は15日に行われる。