<ノア:東京大会>◇25日◇日本武道館◇観衆1万2000人

 ノア史上初のダブルタイトルマッチは世界ジュニアヘビー級王者丸藤正道(29)が60分間の死闘の末、GHC同級王者KENTA(27)と時間切れドローで初防衛に成功した。丸藤は息つく間もなく、来月3日の全日本両国大会で近藤修司(30)と2度目の防衛戦に挑む。一方のKENTAも13日の広島大会でブライアン・ダニエルソン(27)から奪った王座を死守した。

 アクロバティックな技の応酬に観衆が酔った。残り時間30秒、丸藤こん身の力を込めた変形ポールシフトが返された。終了のゴングと同時に両雄は緑のマット上に倒れ込んだ。丸藤は「必ずまたやるでしょう。なぜならおれたちが最高の試合をしますから」と充実感に浸る。試合を裁いた全日本の和田京平レフェリーが「休めない。休ませてくれない。昔の川田、小橋みたいな感じ」と、かつての四天王を持ち出して絶賛する激闘だった。

 丸藤は3週間前、2歳の長男(名前公表せず)と自宅駐車場でアリを6匹捕まえ、ゼリー状のすみかを購入して飼い始めた。小さなアリが必死に穴を掘り、狭い通路の中でふくらみを作ってターンする動きに感動。「こんなに小さな生きものでも知恵を使って生きている。こんなに大きなおれが頑張らなくてどうする」。この日はリング、ロープ、場外、フェンス、レフェリー、観客、プロレスの要素すべてを意識して試合を盛り上げた。まさにプロレスの未来を背負って立つ男の真価を見せた。

 世界ジュニアヘビー級王座の防衛記録は渕正信が持つ14度。宿敵KENTAと引き分けた丸藤は「KENTA以外なら勝てる。14度防衛して渕さんとやりたいですね」と笑顔を見せた。【塩谷正人】