<プロボクシング:WBA世界女子スーパーフライ級タイトルマッチ10回戦>◇26日◇東京・後楽園ホール

 ツナミが世界王者の夢を実現した。同級1位天海ツナミ(24=山木)は王者張喜燕(28=中国)に先手をとられたが、徐々に盛り返し、後半は接近戦でポイントを稼ぎ、2-1の判定で勝利した。サッカーでの夢は挫折したが、ボクシングを始めて4年で、日本ボクシングコミッション(JBC)公認後、3人目の世界王者となった。天海は14勝(5KO)3敗、初防衛に失敗した張は7勝(2KO)2敗1分となった。

 右腕を挙げられ、ベルトを腰に巻かれたツナミは、自然と涙があふれてきた。「泣くつもりなかったが、感情が込み上げてきた。ベルトの重みを感じた」。4年間仕事もせずに、ボクシングにかけてきた。その集大成で、ついに世界の頂点に立った。

 アマからボクサー歴13年の王者に、初回はスピードある足で圧倒された。1回にはスリップながらもダウンした。それでも後半勝負の作戦を遂行。中盤から得意の左フックにボディが当たり出す。後半は接近戦で打ち勝った。「自分では分からなかった」という判定をものにした。

 20歳の時に上京した。神村学園では女子サッカーで全国優勝し、なでしこジャパンを目指した。しかし、手術した両ひざの古傷もあり、なでしこリーグのチームには入団できなかった。サッカー部で同期だったツバサの試合に感動して転向。3カ月でデビューし、3回TKO勝ちした。

 女子を指導して15年と、先駆者の山木会長はキックボクシングと両刀だった。07年に女子が公認されたが加盟時には二者択一を迫られた。150人いたキックの練習生を見切って女子を選んだのは、ツナミという逸材がいたからだった。

 試合4時間前、ツナミは応援に来た妹たちに東京ドーム周辺を案内していた。「自分だけ好きなことしてきた。妹たちの学費を稼ぎたい」という。リングネームは目指す世界の共通語と命名された。男子含め初の日中対決を制してのWBA女子1号王者。武器は足から手に変わったが、世界の夢を叶えた。【河合香】