民主党からの参院選出馬を辞退した総合格闘技団体リングスCEO前田日明氏(51)が24日、理由を説明するはずだった会見を突然中止した。前田氏はこれまで、出馬打診時に民主党側から選挙資金負担の申し出があったが、後に自己負担を求められたとしており、テレビのインタビューでは党側に謝罪を求めるシーンもあった。一方、民主党の石井一選対委員長は同日、選挙資金をめぐる前田氏の主張を全面否定し、謝罪についても「要求はなく、必要はない」とした。

 前田氏が沈黙に転じた。この日午後3時から、渋谷区内のリングス事務所で行うはずだった辞退理由の説明会見。約20人の報道陣が集まったが「諸般の事情により中止とさせていただくことになりました」とのペーパーが配られ、リングススタッフが謝罪した。「会見会場が小さく、報道陣が入りきらない」などの説明があったが、前田氏も現れず、明快な中止理由は明らかにされなかった。

 石井選対委員長は、前田氏が出馬辞退の理由に挙げている選挙資金負担の認識差について「彼は、民主党から『丸抱え』との期待感を持ったかもしれないが、党の責任ある立場の者はそんなことは言っていない」と否定。石井氏によると、前田氏に出馬要請していた民主党職員も「資金を出すとは言っていない」と話しているという。

 辞退の背景について、前田氏は23日に都内の憲政記念館で行われた映画「太陽と月と」(福原進監督)の試写会会場で「出馬の要請は、アウトサイダーの興行があって選挙資金を出せないので断った。それでも、民主党側から(選挙費用を)負担するからという話だったので、要請を受けた」と経緯を説明。だが「後になって、自己負担5000万円という話になった」とし、党側との選挙資金やサポート面、外国人地方参政権付与問題などの政策面で、認識の違いがあったことを挙げていた。

 今回の辞退について、日本テレビが23日から24日にかけて、前田氏が石井氏、小沢氏らに謝罪を求めるインタビュー映像を放送した。これに対して石井氏は「謝罪の必要もないし、謝罪しろなんて彼(前田氏)は言っていません」と説明。前田氏との感情のもつれについても「もしあれば、彼は会見を中止したりしない」と話した。

 謎の会見中止について、前田氏と親交のあるモッツ出版の高須基仁社長(60)は「前田さんは、はらわたが煮えくりかえっているが、発言を続けて他党に利するのも本意でない」と説明。同社長によると、前田氏も「これ以上言うのも、自分らしくない。断腸の思いで、捲土(けんど)重来を期し、沈黙を選んだ」と話しているという。