WBC世界スーパーフライ級1位河野公平(29=ワタナベ)が、恩人の愛情スパーで王座奪取への闘志をさらにかき立てた。同級2位ロハス(メキシコ)との同級王座決定戦(20日、さいたまコミュニティアリーナ)に向けて15日、都内で練習を公開した。スパーリングパートナーを務めたのは、何と12年前の入門時から二人三脚で世界を目指してきた高橋智明トレーナー(33)。河野は手加減しなかった。聞き慣れた恩人の「連打!」の声に呼応し強烈なパンチを浴びせた。6分間のスパーリングを終え、2人はそっと手を合わせた。ジムに入門した18歳の時、病気でプロの夢をあきらめた大卒の高橋トレーナーと出会った。ボクシングに情熱を燃やす若者と、熱血新米トレーナーが同じ夢を描くのに時間はかからなかった。08年9月、世界王座決定戦に初めて臨んだが名城に判定負け。あと1歩で涙をのんだ。河野は熟慮の末、現役続行を決意。高橋トレーナーも「最初に見た選手。思い入れがある」と、河野のために09年3月から静岡・御殿場にいる妻と息子2人と離れ単身赴任生活を送っている。

 この日は体を張ってパンチを浴び続けてくれた恩人の姿に、河野は「高橋さんがいなかったら今の自分はない。世界王者になることが恩返し」と決意を新たにしていた。【浜本卓也】