国内最速の6戦目で世界奪取に成功したWBC世界ライトフライ級王者・井上尚弥(20=大橋)が7日、横浜市内の所属ジムで会見を行った。井上は、将来的なフライ級かスーパーフライ級への変更を希望。記憶に残るボクサーを目指すことも強調した。

 井上は「家で映像を見て、チャンピオンになったんだなと実感しました。あんなに乱れて喜んだのは、人生で初めてです」と、柔らかな表情で勝利の味をかみしめた。それでも今後について聞かれると、王者としての所信表明をするかのように言葉に力を込めた。

 「記録にはこだわっていない。いかにファイトスタイルで認められるか。記憶に残る試合をして、歴史に名前が残ればいい。記録を意識すると、良いマッチメークが出来ないと思う」

 複雑な心境だ。6日の試合では、8キロにおよぶ減量が原因で3回終盤に足がつるアクシデントに見舞われた。「足が使えない中で勝てたのは、今後のプラス」と前向きに話したが、「実際に症状として出てきてしまったので…」。明言こそ避けたが、階級を上げて戦いたいという思いは強い。

 大橋会長も、交渉が必要と前置きした上で「(防衛を)1回か2回はできると思ったが限界。けがも多くなるし、物理的に難しい」と思いは同じ。「尚弥が一番強さを出せるのはスーパーフライぐらいだと思う」と、2階級を視野に入れていく可能性も示した。

 転級が実現すれば、井上が求める「強い相手との戦い」の想像は大きく広がる。5月7日に3階級制覇を狙う井岡、39戦無敗のゴンサレス、2階級制覇王者レベコら、強敵との夢対決にも期待が膨らむ。

 適正階級での長期防衛を目標と語る怪物は「体重的に伸び伸びできるのはスーパーフライ。フライでも1・9キロ違えば全然違う」。減量から解放されれば、さらなる進化にも自信を見せている。今後は1週間程度の休養を取り、来週以降に再始動。今月10日に21歳の誕生日を迎える王者の動向に注目が集まる。【奥山将志】