<プロボクシング:WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦>◇5日◇東京・代々木第2体育館

 WBC世界ライトフライ級王者井上尚弥(21=大橋)が、同級13位の挑戦者サマートレック・ゴーキャットジム(29=タイ)を11回1分8秒、TKOで下し、初防衛に成功した。減量に苦しみながら11回に連打でTKO勝ちし、試合後はフライ級転級を宣言した。

 試合を支配しながら、井上はなかなかKOできない。4回に右フック、6回に左ボディーと理想的なダウンを奪いながら、フィニッシュは11回。ゴングと同時に前に出て、サマートレックの顔面を連打したところで、レフェリーが試合を止めた。

 井上は「ライトフライに落とすのに、いっぱいいっぱいでした。試合は何もできなくて0点でした」と、まるで負け試合のようなコメント。4、5回の連打で拳を痛めたこともあったが、後半に失速した。普通の体重で入門時より4キロ増え、減量で最後の1、2キロを落とすために筋肉まで落とさなければならなかった。一方で、胸囲は前回4月より2センチ増え85センチに。「この階級はもう無理」と父の真吾トレーナーも話し、王座返上も考えられていた。

 前回の試合後、3、4日休んだだけで練習を再開。120回を超すスパーリングをこなしてきた。管理栄養士と契約し、食事を改善。以前は1日2食だったが、朝食も食べ、苦手だった野菜も口にして、減量苦に負けない肉体改造に取り組んだ。サマートレック戦の勝利は、努力の証しだった。

 今後について井上は「フライ級でやります。レベコやエストラーダと強いチャンピオンがいるので楽しみ。八重樫さんのリベンジもしたい」と抱負を語った。プロデビューからここまで、まだ7試合。大橋会長は「上げてチャンスがあれば、すぐ世界戦も考えている」と話した。元2階級王者井岡一翔がつくった史上最速の2階級制覇記録の11試合までには、十分過ぎる時間がある。【桝田朗】

 ◆日本人の複数階級制覇

 3階級は亀田興毅だけ。2階級は、ファイティング原田、柴田国明、井岡弘樹、畑山隆則、粟生隆寛、長谷川穂積、井岡一翔、八重樫東、亀田大毅が達成。最速は井岡一翔の11戦目。日本のジム所属ではホルヘ・リナレスも達成している。世界ではデラホーヤ、パッキャオの6階級が最高で、メイウェザーらが5階級で続く。