シュルトが3連覇、黄金時代の到来/K1※画像クリックで拡大表示<K-1

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 GP決勝>◇8日◇横浜アリーナ◇観衆1万7667人

 絶対王者セーム・シュルト(34=オランダ)が史上初のWGP3連覇を成し遂げた。昨年と同じ顔合わせとなった決勝で、ピーター・アーツ(37)を1回1分49秒、左ストレートでKO。3月に新設されたスーパーヘビー級王者にも輝き、黄金時代到来を予感させる勝利となった。

 判定勝ちが多く、批判されることもあったが、王者シュルトが3勝のうち2勝はKOでもぎ取った。「いずれも簡単な試合ではなかったよ。フェイトーザ戦が大きかった」。不沈艦のようなシュルトが、ブラジリアンキックを側頭部に受け、グラリと傾いたのがこの日唯一のピンチ。

 しかし、そこからが強さの真骨頂だった。決定打は許さず、逆に攻めて判定でしのぐ。レバンナの右足を蹴り砕き、あとはアーツだけ。1回1分49秒、長いリーチを生かした左のストレートを顔面に打ち込む。衝撃にアーツがバランスを崩し、右ひざを痛めた瞬間、快挙が決まった。「うれしい。夢がかなったよ」。笑顔を絶やさず言葉は弾んだ。

 安定した試合運びから、リスクとは無縁のクレバーなイメージがあるが、実は武士道を重んじる。来日を重ねるたび、心の中で気にかかっていたことがあった。日本の「いじめ問題」だった。それをただの異国の社会問題で片付けない感性がある。

 オランダで道場を開き、子供たちに空手を教えている。心に残る親子会話があった。道場に来ていた子供が、シュルトの目の前で父親の勇気を確かめるように聞いた。「パパとシュルトが戦ったらどっちが強いの?」。すると父親は即答した。「もちろんパパさ」。

 シュルトは思った。「本当は私の方が強い(笑い)。しかし、子供の前では堂々と自分だと言えることが大切だ。これは虚勢とは違う。この自尊心が子供に伝われば、子供同士でのいじめもなくなると思った」。

 本当の強さを求め、精神も磨き、肉体も鍛えて勝ち得た栄冠だ。強いのは大きいからでも、戦い方がうまいからでもない。「今度はロッキーのような試合がしたい」。本物の強さを探求する心が、シュルトを日々向上させている。【井上真】[2007年12月9日8時39分

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