関脇照ノ富士(23=伊勢ケ浜)が大関稀勢の里(28)を下手投げで破り、9勝目を挙げた。前日の横綱白鵬戦に敗れて今場所後の大関昇進の可能性は消滅。来場所での再挑戦に向け、期待をもたせる1勝になった。混戦模様の中で、トップと1差。他力ながら逆転優勝の可能性も残した。

 どちらが大関か分からなかった。照ノ富士は稀勢の里を豪快に投げると「気持ち良かったなあ」と満足そうに言った。最初の立ち合いは「左で張るか、右で行くか迷っちゃって。迷うと思い切りいけなくなるから」と、1度「待った」。仕切り直すと左四つから、上手を取られた瞬間に腰を入れて巻き込み、土俵に転がした。前日は白鵬に敗れて今場所後の大関昇進がなくなったが、勢いを途切れさせなかった。

 過去1勝3敗の大関をライバル視しているからこそ、準備に余念がなかった。取組前の支度部屋では締め込みに水を含ませ、きつく締めた。4日目の逸ノ城戦に次いで2度目で、普段はめったにしない。「(相手が)誰でも勝ちたいよ」とけむに巻いたが「上とやるときは考えないとダメ」と常々話している。内容も意識し、琴奨菊に続き2人目の大関も撃破した。

 来場所の大関とりにつなげるには、今場所2桁勝って流れをつくりたい。照ノ富士は「しっかりと自分の力を出し切ることができた。一番一番、集中して」と前を向いた。2横綱がそろって敗れるなど、波乱の夏場所。残り3日、来場所につなげるだけでなく、初めての賜杯だって夢ではない。【桑原亮】

 ◆12日目終了時で1差に8人 1差に9人が集結した04年名古屋場所以来の大混戦。同場所の状況は2敗で横綱朝青龍、平幕の雅山が並び、3敗で大関魁皇、千代大海、関脇栃東、平幕の白鵬、朝赤龍、豊桜、普天王が追う展開。最終的には2敗を守った朝青龍が優勝。