左肩の故障明けで3場所ぶりに出場した横綱鶴竜(29=井筒)が、関脇逸ノ城(22=湊)を押し出しで下した。

 立ち合いで左から張って右を差し、組みかけたところで今度は左に回り込みながら突き放し、そのまま攻め勝った。久々の復帰戦で好内容の相撲を見せ「まあ良かったです。思い切り行けたんで。しっかり反応して動けました」と満足そうに話した。

 休場明けとはいえ、横綱として負けは許されない。それだけに、精神的にも大きな白星だ。「1番取って、勝って、やっぱり少しは明日から肩の力も抜いていけるのかなと思いました。緊張感も取れてね」と、ほっとひと息ついた。

 休場中は試練の時間が続いた。「つらかったですよ。そりゃもう」。テレビをつけると、ライバルたちが奮闘する姿が映った。「(自分は)何やってるんだろうという、思いがあった」。それでも、あえて場所中は相撲のテレビを見た。「ちゃんと見るようにしましたね。できるだけ気持ちを土俵から離れないようにするためです。場所には出られないけど、同じように体は動かしてね」。

 そうして積み重なっていたうっぷんは、この日の土俵で晴らした。「2場所休んで、悔しかった気持ちをぶつけるというか、そういう気持ちを思いだして、気合を入れてやりました」とうなずいた。

 久々の実戦で、土俵から下りると右足親指に切り傷があった。支度部屋で手当てしながら「肌がちょっと弱ってますね」と苦笑い。それでも、その顔には仕事場に戻ってきた男の充実感がにじみ出ていた。「まだ始まったばかり。集中してやっていきたい」。負けられない覚悟を持って、横綱としての務めを果たすつもりだ。