横綱日馬富士(31=伊勢ケ浜)が、大関稀勢の里に寄り切りで敗れたが、1敗差の横綱白鵬、平幕松鳳山も敗戦。7度目の優勝が決定した。

 あれから10年も、月日が過ぎた。06年初場所で大関栃東が優勝してから58場所目の九州場所も、日本出身力士の優勝はなかった。元栃東の玉ノ井親方は「あっという間。寂しいと言えば寂しいけど、ここまで来たら、どこまで行くのかな」と苦笑いが浮かんだ。

 土俵の上で強い力士が勝つ。その力士が数多く競り合うことで、盛り上がる。そこに国籍は関係ない。ただ、10年という一区切りは、あまりにも「不在」の重さを突きつける。

 北の富士勝昭氏(元横綱)は解説を務めたNHK大相撲中継で、外国に連れて行かれたウグイスが鳴き方を忘れた話を例に「日本人の相撲取りも、いつになったら鳴き方を思い出して優勝するかな」と遠い目をした。常に代表格に名前が挙がる稀勢の里は「悔しさはあります」と唇をかんだ。

 機会がないわけではない。今年は夏場所で43年ぶりに、千秋楽で8人が賜杯を争った。今場所も松鳳山に可能性が残っていた。史上初の平幕優勝を2度経験している中村親方(元関脇琴錦)は「千秋楽まで、日本人力士も優勝争いをしている。いつか巻き返すチャンスは芽生えている。本当に紙一重」と強調した。

 そのわずかな差をつかむために何が必要か。九重親方(元横綱千代の富士)は「三役が大関を、大関が横綱を目指すなら、もっともっとやらないと。『もっと』じゃないよ。もっともっとだ」。玉ノ井親方は日本人3大関に「大関になるために半年間も頑張って来れた。それをバネにしないと」と叱咤(しった)した。

 急逝した北の湖理事長は「土俵の充実」を1番に掲げた。優勝の行方が最後まで分からない場所こそ、最高の充実。八角理事長代行(元横綱北勝海)は「いい相撲を取って、お客さんが喜んでもらうことが一番」。そこに日本人力士も数多く絡めれば、亡き理事長の夢がかなう。【今村健人】