日本相撲協会は27日、名古屋場所(7月10日初日、愛知県体育館)の番付を発表した。7月3日に30歳となる大関稀勢の里(田子ノ浦)は綱とり条件の初優勝を果たせば、先代師匠の故鳴戸親方(元横綱隆の里)と同じ初土俵から86場所目。さらに同じ30歳の名古屋場所での横綱昇進も見えてくる。めぐり合わせをモノにできるか。

 20代でいられる時間まで残り1週間を切った。来る30歳へ、稀勢の里は言った。「体は元気ですし、気持ちもまだまだです。あくまでも通過点。これからだなという気持ちです」。そして、自身4度目の綱とりに向けて「平常心で、自信を持って土俵に上がれるようにやりたい」と誓った。

 30歳で迎える名古屋場所での綱とり。そこには、11年に急逝した亡き先代師匠との巡り合わせが潜む。

 隆の里は83年の夏に13勝し、続く名古屋で14勝を挙げて優勝。30歳で昇進を決め、「おしん横綱」と言われた。その道は、まさに似ている。また、ここで稀勢の里が初優勝を果たせば初土俵から86場所目。それも、先代と重なる。

 「先代には15歳から、これを食べたらいいとか、ただ詰め込むのではなく食べる順番も教えてもらった。畳の上の振る舞いも厳しく指導してもらいました。力士としての格好や精神は常に教えてもらっていますから、特別に今どうこうではなく、僕の全てがそう」。10年間の教えが染み込んだ体と心で「何とか、そういう気持ちで頑張りたい」と、先代との縁を信じた。

 6月は地元茨城で激励会があり、香川で合宿。その後は阿武松部屋で2日間、出稽古した。行く先々で激励された。「ここまで応援してくれる人がたくさんいると思うと、恩返しをしないといけない」。それを名古屋でする。【今村健人】