第72代横綱誕生に、道筋が敷かれた。日本相撲協会の八角理事長(53=元横綱北勝海)は、22日の千秋楽結びの一番後、審判部から稀勢の里の横綱昇進を審議する臨時理事会の開催を要請され、これを受諾。今日23日に開かれる横綱審議委員会(横審)に諮問することになった。横審も賛意を答申する意向で、25日の臨時理事会で正式決定の運びとなる。

 表彰式終了後、足早に引き揚げる通路で八角理事長は、お墨付きの言葉を発した。それは昇進を見越した「横綱稀勢の里」への叱咤(しった)激励だった。

 八角理事長 今まで以上に努力して自分のことだけでなく、横綱としてみんなを引っ張ってほしい。もうやるしかない。後には引けないわけで、逃げるところはない。だから価値があるんだ。

 この日午前。最初のハードルだった審判部の総意はアッサリとクリアされた。二所ノ関審判部長(元大関若嶋津)によると、実は場所終盤の数日間で全審判部員から意見を聞き「優勝すれば(昇進で)いいのではないか」の賛意で集約されたという。白鵬戦の結果を問わず、八角理事長への臨時理事会開催の要請が決まった。「昨年、年間最多勝を取った実績がある」と同部長。従来の「2場所連続優勝、もしくはそれに準ずる成績」という前提はあるが、今後も「持続した安定感」が判断材料になることも示唆した。

 手続き上、2番目のハードルである臨時理事会の開催も理事長の快諾で決定。問題は横審の意向だ。過去に4例で、諮問に対しNOの答申があった、事実上の最終決定機関ともいえる最終ハードル。ただ、この日も観戦後に取材対応した守屋秀繁委員長(千葉大名誉教授)の言葉には、楽観ムードが漂う。

 守屋委員長が千秋楽までに、観戦に訪れた横審委員の数人と意見交換したところ「全員が肯定的、賛成のご意見でした」という。その数は委員長を含め6人。その他の5委員を合わせても「反対の人はいないと思います」と確信に満ちた表情で話した。委員会当日、1人は欠席のため、仮に票決に持ち込まれた場合、出席10人中、3分の2以上の決議が必要なため、7人の賛意となれば推挙の答申となる。

 協会トップの八角理事長同様、守屋委員長も稀勢の里に、理想の横綱像を期待する。「力量は抜群。今後は、さらに国民に尊敬されるような大横綱になっていただきたい。耐えて頑張って今回の栄冠を勝ち得たのは、よほど忍耐強い人だということ。立派な横綱になってほしい」。日本人横綱復活への、カウントダウンが始まった。