横綱稀勢の里(30=田子の浦)が左上腕付近の負傷により休場した。

 ダメージは限界だった。横綱の責任も感じていた。琴奨菊に負けて4敗目を喫した10日目の夜、稀勢の里自ら「中日くらいから力が入らない。相撲にならない。休場させてください。すみません」と願い出た。弱音を吐かず、責任感の強い横綱の異例の申し出に、師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)も受け入れた。

 春場所13日目に左上腕付近を負傷。劇的な逆転優勝を飾るも代償は大きく、春巡業を全休して治療に専念した。関取と相撲を取り始めたのは初日8日前。急ピッチで調整し、場所に入っても取組後は真っ先に治療に向かう。夕食はその後に回した。できる限りの手は尽くしてきたが、力は戻らなかった。大関時代の14年初場所千秋楽以来、自身2度目の休場になった。

 11日目に提出した診断書は、前回と同じ「左大胸筋と左上腕二頭筋の損傷で約1カ月の通院加療を要する」。田子ノ浦親方は「悪化はしていない」と話した。その上で「横綱ですから、ただ出るだけとはいかない。責任もあり、そういう決断をしたと思う。すごく悔しいと思っているし、ふがいない気持ちで胸がいっぱいだと思う」と代弁した。

 場所後は横綱力士碑への刻名式など、さまざまな行事が予定されていた。対応はこれから話し合われる。師匠は「ファンの方が待っていることなので、本人と話して考えたい。来場所は最後まで横綱の使命を果たせるよう、一緒に努力していける環境をつくりたい」とした。【今村健人】