火災の火は消しても、相撲人気の火は消さない-。1月の初場所で引退した、元横綱稀勢の里の荒磯親方(32=田子ノ浦)らが5日、大相撲春場所(3月10日初日)の会場となる大阪・浪速区のエディオンアリーナ大阪で行われた消防訓練に参加した。

訓練は午前11時5分、地下1階の調理場で火事が発生し2、3階に観客がいる想定で始まった。まず荒磯親方は2階で倒れている負傷者を、やはり初場所限りで引退した押尾川親方(元関脇豪風)らとともに担架で、1階まで階段を下りて搬出。今度は、担架を持ったまま「煙体験」として、煙が充満するテントを通過した。

次は地震体験車に乗車し、震度5から6弱、6強、7までの揺れを体験。その後はAED(自動体外式除細動器)の講習を含めた心肺蘇生の訓練も行った。最後はs消火器を使った消火訓練で、約40分間の消防訓練を終えた。

現役時代も、春場所前には大阪市内の宿舎で消防訓練をした経験があってか、動じることなく冷静に対処した。地震体験車については「(乗車は)初めて。地震の怖さというか、いい体験をした。立っていられないし、座っているのもきつかった。(東日本大震災の)関東は、あれほどじゃなかった」と話した。

親方として初めて臨む春場所は、5日後に迫る。その時の自分の姿、心境は「想像もつかない感じ」という。その春場所では、会場の警備にあたる予定で、大阪のファンも間近で見られるかもしれない。初場所では引退翌日、関係各所を回るため、両国国技館内を移動するたびに、黒山のファンに囲まれた。消防訓練は、そつなく「消火」に務めたが、相撲人気の火は鎮火させない。