2度目の暴力問題が判明した大相撲の十両貴ノ富士の、双子の弟で前頭の貴源治(ともに22=千賀ノ浦)が、涙ながらに兄に反省を促したことを明かした。4日、都内の部屋での稽古に、謹慎中の貴ノ富士は姿を見せなかったが、貴源治は稽古後、報道陣に対応。「昨日(3日)の朝も夜も、おととい(2日)も2人で話した。先代(元貴乃花親方)が体を張って守ってくださったのに、本当に何をしているのか。悲しいし、悔しいし、情けない気持ち」と、唇をかんだ。

昨年春場所中に続き、付け人の序二段力士に暴力を振るったのは8月31日だった。その事実を知ったのは師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)らと同じ2日だったという。その後、同日、翌3日と昼夜を問わず、何度も2人で話し合ったという。やりとりの一部についても明かした。

貴源治 何をやっているんだ!

貴ノ富士 今まで、お前のことをガキ扱いしてきたけど、お前の方がよほど大人だったんだな。

貴源治 気付くのが遅すぎる。

その間、2人とも涙を流していたという。昨年春場所中の付け人への暴力で、謹慎して同場所を途中休場、翌夏場所は出場停止となった。当時の師匠の貴乃花親方は、親方衆の階級で最も低い年寄に降格したが、貴ノ富士に相撲を取る道を残した。その恩をあだで返す行為に、貴源治は憤りや失望など、さまざまな感情がわいてきたという。それでも貴源治は「彼は彼の人生。自分は自分の人生。割り切らないといけないけど、兄貴は兄貴。身内である自分が見捨てることはできない」と、家族だからこその心境を吐露した。

もちろん秋場所(8日初日、東京・両国国技館)では、自身への批判、罵声も避けられないことは予想している。「(ただの)兄弟ではなく双子。自分にも批判があることは覚悟している。でも双子の兄を背負っていく覚悟はある。『双子だからあいつも暴力を振るうだろう』と思われると思うけど自分は違う。逃げ出すのは簡単なようで難しい。自分にはこれ(相撲)しかないという覚悟がある。信念を持っている。そういう信念を兄貴にも持ってほしい」と、真剣な表情で語った。

今後は、コンプライアンス委員会による調査で処分が決まるが、厳罰は避けられない。日本相撲協会は昨年10月に「暴力決別宣言」を発表し、特に繰り返しの暴力には厳しく対処する方針を打ち出したばかりだ。相撲界を去る可能性も少なくないが、貴源治は「もしも残ることができるなら、もっと自分が近くで見てあげて注意してあげたい。更生してもらいたい。どんな理由があっても暴力は暴力。ゼロからまた一緒にやっていきたい」と、現役を続行できた場合、自らが監視役を務めることも名乗り出ていた。