6戦全勝で優勝争いが2人に絞られていた幕下は、西51枚目の魁渡(23=浅香山)が、既に1場所での十両復帰を確実にしている西筆頭の若元春(26=荒汐)を破り、16年初場所の序二段優勝に続く2度目の各段優勝を果たした。

関取経験者の出足に後退したが、ひそかに狙っていた。若元春が左を差し、一気に出たところで体を開きながら、差された右を小手に巻いて投げた。勝つにはこれしかない? という狙い澄ましたような小手投げに「狙ってた? いや、気にしないで…ウソです。頭のどこかにはありました。右を入れられて“やばい”って思ったけど、一発にかけてみようと」と、半ば捨て身の逆転の投げに、してやったりの表情だった。

西幕下16枚目だった先場所は、初めて味わう屈辱の7戦全敗。「だから今場所は、5番勝ったところで“いいかな”と。6番目も勝って、最後の7番相撲は、どれだけ通用するか挑戦したかった。今場所は休まず攻められたのが良かった」と無欲で臨んだ今場所を振り返った。

来場所は、昨年夏場所の西幕下9枚目を飛び越える自己最高位は確実。関取の座も十分、狙える位置に番付は上がる。「素直にうれしいです。気合を入れて頑張らないと」と言い、関取の座についても「1回ぐらいは思い出作りに上がっておきたい」と話す一方で「また全敗しちゃったりして」と笑いながらの受け答え。取材の輪は最後まで、ほのぼのとした空気に包まれていた。

新潟県佐渡市出身。現役では、高砂部屋の幕下力士の寺沢と2人いる。新入幕で三賞独占の離れ業を演じた元小結大錦も輩出している。「ボクのこの優勝をきっかけに、佐渡がもっと世の中に知られるようになればうれしいです。1つ上の先輩の寺沢さんにも負けないように」と奮闘を誓っていた。