[ 2014年6月16日7時46分

 紙面から ]<W杯:日本1-2コートジボワール>◇1次リーグC組◇14日◇レシフェ

 ザックジャパンが逆転負けで、最悪の黒星発進となった。日本はW杯ブラジル大会1次リーグ予選初戦のコートジボワール戦で敗戦。前半に先制も後半、立て続けに同じパターンで連続失点。さらにアルベルト・ザッケローニ監督(61)の交代策も空回りし「私の試みは失敗に終わった」と反省の言葉を口にした。現行方式では、初戦黒星での予選突破の確率は約8%。非常に厳しい現実と向き合いながら、第2戦ギリシャ戦に臨むしかない。

 体にまとわり付くような蒸し暑さ。90分を戦い終えた選手たちは、グッタリとした表情を浮かべピッチを去った。それを見つめるザッケローニ監督の視線は宙をさまよった。日本は最も大事なW杯初戦で、4年間積み上げた「日本のサッカー」を出さずに敗れた。

 指揮官の迷い、混乱が黒星に直結した。6日の親善試合ザンビア戦でサイドを崩され失点を重ねた「トラウマ(心的外傷)」からか、この日はサイドの守備を徹底。「ある程度、引いて守ることを意識した」(FW岡崎)。選手たちは主導権を握り攻める日本のサッカーと、ザッケローニ監督の指示との間で揺れ動く結果となってしまった。

 前線からの積極的な守備とスピード感あふれる攻撃、「インテンシティ」と呼ぶ攻守の切り替えの速さがザックジャパンの生命線。だが、予想外の運動量の少なさが持ち味を奪った。「もっと積極的に、攻撃的にプレーするべきだった。相手に多くのスペースを許してしまった。残念ながら通常のプレーができなかった」。ザッケローニ監督の言葉に力はなかった。

 本田のゴールで先制しながら、後半18分48秒に同点とされ、同20分28秒に逆転ゴールを決められた。「悪夢の100秒間」となったが、これは偶然ではない。DF長友、FW香川のいる左サイドを崩され、同じパターンで連続失点した。サイドの守備を意識したにもかかわらず、運動量が少なく相手へのプレスが緩くなり、守備が決壊。指揮官は「守備の積極性がなかった。相手にサイドをうまく使われた」とうなだれた。

 ザッケローニ監督の交代策にも一瞬の迷いが生じた。後半10分過ぎからウオーミングアップ中のFW大久保を2度呼びながら投入を見送ると、その間に同点、逆転を許した。後半22分に1トップのFW大迫に代え、「3度目の正直」でFW大久保を投入。直後の同28分にはFW本田をトップ下から1トップへ、1トップの大久保を2列目の左、左のFW香川をトップ下に移そうとしたが指示が伝わらず、意図を図りかねた選手がピッチ上で右往左往した。さらに同41分にはFW柿谷を1トップに入れ、本田をトップ下に戻した。

 ザッケローニ監督

 戦況を好転させるために交代のカードを切った。交代でチームの動きを良くしようとしたが、(交代前と)同じような動きをしていた。私の試みは失敗に終わった。

 まさかの「失敗宣言」だった。しかも、1点を追う状況で左サイドに落ち着いた大久保に出した指示は相手の右サイドバックのケア。終盤には4年間でほとんど試さず成功体験もない、DF吉田を前線に上げてのロングボール攻撃で打開を図ったが、ゴールには届かず。ザッケローニ監督は「選手も追いつこうと意気込みを持ってプレーしてくれたが、うまく表現できなかった」と振り返った。

 「大切なのは今後、何をするか。分析した上で、明日以降に選手と話し合いたい」。ほとんどが裏目に出たザック采配。後悔ばかりが残る1敗。残り2試合、もう後戻りはできない。【菅家大輔】

 ◆日本のW杯での失点

 コートジボワール戦はわずか100秒を挟み、いずれもDFオーリエのクロスからヘディング弾で連続失点したが、W杯では短時間で、同じ選手や同様のパターンで失点する傾向がある。06年ドイツ大会オーストラリア戦では、後半39分にゴール前の混戦からケーヒルに同点弾を許すと、296秒後の44分に再びケーヒルにミドルシュートを決められた。98年フランス大会ジャマイカ戦では、前半39分にロングボールのこぼれ球からウィトモアに切り込まれ失点し、後半9分にまたもウィトモアにドリブル突破され追加点を献上。得点選手へのマーク、同じパターンの攻撃への注意が緩むのは、日本の悪い癖ともいえる。