AKB48の東京ドーム公演が26日に最終日を迎え、今日27日にグループから卒業する前田敦子(21)のプレ卒業式といった演出となった。27日の「卒業公演」は、ホームタウンの東京・秋葉原のAKB48劇場で催されるが、見届けられる観客は、わずか250人。目撃できない4万8000人の大観衆に感謝の気持ちを伝えるため、一番の思い出の曲「桜の花びらたち」が流れる中、ゴンドラでスタジアムを1周した。

 「AKB48前田敦子」の夢の終着点、東京ドームの最後は、思い出のデビュー曲「桜の花びらたち」だった。高橋みなみ(21)ら仲間が歌う中、1人でゴンドラに乗り、スタジアム内を回った。「正直すごく寂しいです。ですが自分で決めた道です。ここから前に歩き出したいと思います。本当に本当にありがとうございました」。桜の花びらが舞い散る中、手を振り続けた。

 卒業一色だった。オープニングも「桜の花びら」の前田によるソロバージョンだった。オーケストラ団を従え、1人で大舞台に立った。1年前の選抜総選挙で1位奪還直後「ずっと孤独でした!!」と泣き崩れた姿はなかった。十数万本ものサイリュームの絶景をかみしめるように見渡すと、あっちゃんコールが押し寄せた。

 思い出の曲は尽きない。高橋に「これがアイドル前田敦子の最後の姿です」と紹介され歌った「渚のCHERRY」。デビュー1年目、初センターに選ばれた当時14歳の前田は「私だけ色の違う衣装で歌いたくない」と目立つことを嫌がった。女性らしさを覚醒させた4年前の「黒い天使」。ともに渡辺麻友(18)松井珠理奈(15)島崎遥香(18)ら次世代センター候補を従え、アイドル魂の伝承式のように歌った。初期メンバー6人で3日間歌い続けて涙した「夕陽を見ているか?」、昨年の日本レコード大賞受賞曲「フライングゲット」。アンコール1曲目「夢の河」は、新曲「ギンガムチェック」(29日発売)にAKB48として最後に収録したカップリングのラストバラードだ。

 高橋や大島優子(23)らと抱き合って歌い、船に乗って1人でステージを降りると、再び「桜の花びらたち」で送り出された。同曲は「制服アイドル」を印象づける典型的な学園卒業ソングだった。観客7人だった秋葉原から東京ドーム。始まりも終わりもこの曲だった。今となっては、この日のための曲だったのかも知れない。そんな運命を感じさせるフィナーレで前田は、夢の大舞台を去った。【瀬津真也】