【カンヌ(フランス)17日(日本時間18日)=小林千穂】北野武監督(ビートたけし=63)の新作「アウトレイジ」(6月12日公開)が、第63回カンヌ映画祭コンペティション部門で正式上映された。上映後には3分半のスタンディングオベーションで称賛され「客をKOした」と喜んだ。評価は賛否両論だが、バイオレンス作品だけに反応は想定内で、海外セールスも好調。現地時間23日の授賞式で最高賞パルムドールなど各賞が発表される。

 11年前とはまったく違う評価だ。99年、コンペティション部門に選出された「菊次郎の夏」は、上映での反応も、映画記者らによる評価、地元紙の反応もかなり高かったが、結局は無冠に終わった。北野監督は「痛めつけられてトラウマになった。いくら褒められても期待することは絶対やめよう」とまで思っているという。

 「アウト-」の評価はかなり割れている。会場で配られる情報誌「SCREEN」での各国映画記者の評価は、★4つを満点として、★か★★が多く、無星の「BAD」の評価も。平均点は0・9点と、これまで上映された8作品の中では最下位と厳しい。

 しかし地元紙は、北野監督と作品に2ページを使う破格の扱いだ。「キタノはKO?」と見出しを掲げているが「足りないのはパルムドールだけ」「今年はキタノイヤー」などと評価し、監督賞(グランプリ)に北野監督を挙げた。

 午後10時半から最も大きな劇場リュミエールで始まった正式上映では、席を立つ人はほとんどいなかった。うめきや笑い、拍手などの反応があり、満員の約2500人は3分半のスタンディングオベーションでたたえた。終了後、北野監督は「見事に客をKOした。半分以上立つかなと思った。バイオレンスでこれだけ反応がいいのは意外」と喜んだ。

 ヤクザの抗争と激しい暴力描写があるだけに、賛否両論は想定していた。北野監督は「よくぞカンヌがこの映画をコンペに呼んでくれた。感謝感激。誇り高いコンペに選ばれて、なおかつ賞なんてずうずうしいことは言わない。こっちに来てびっしりインタビューで埋まってるんだけど、それがありがたい」と話した。

 さまざまな評価があることが、作品への興味そのもの。注目度が高いことは間違いない。欧州を中心に配給交渉が続いており、すでにフランス、ロシア、香港などどの配給が決まっている。