2017年も幕を開けたばかりですが、ハリウッドでは賞レース本番を迎えています。8日にゴールデン・グローブ賞授賞式が控えているほか、24日にはいよいよアカデミー賞のノミネーションも発表されます。ということで、現地より今年の賞レースの行方を一足お先にお届けします。

 今年の注目作品は、なんと言ってもJ・J・シモンズがアカデミー賞助演男優賞に輝くなど3部門を受賞した「セッション」(14年)で知られるデミアン・チャゼル監督のミュージカル「ラ・ラ・ランド」。ロサンゼルスを舞台にエマ・ストーン演じる売れない女優とライアン・ゴズリング演じるジャズピアニストのロマンスを描いた作品で、ゴールデン・グローブ賞では作品、主演男優、主演女優、監督賞など主要部門を含む最多7部門にノミネートされています。アカデミー賞でも最有力候補といわれていますが、今年は他にどんな作品が候補入りする可能性があるのでしょう。第1回は作品賞有力候補を一挙まとめてご紹介します。

 「ラ・ラ・ランド」の対抗馬となりそうなのが、「ムーンライト」と「マンチェスター・バイ・ザ・シー」。「ムーンライト」は貧困地域で暮らす黒人少年の成長を描いた小規模作品ながらも批評家の評価が非常に高く、タイム誌が今年のNO・1映画に選んでいます。ゴールデン・グローブ賞でも作品賞、監督賞など6部門に名を連ねており、あのブラッド・ピットが製作総指揮を務めていることも話題の一つ。昨年はアカデミー賞俳優部門にノミネートされた20人全員が白人だったことから、「白すぎるオスカー」と物議を醸しただけに、黒人少年の成長を描いた本作は人種問題の観点からも注目を集めており、ノミネートを果たすことは確実視されています。

 マット・デイモンが製作総指揮をとり、ベン・アフレックの弟ケイシー・アフレック主演の「マンチェスター・バイ・ザ・シー」は、全米俳優組合賞で作品賞に相当するキャスト賞を始め、主演男優賞、助演男優、助演女優賞にノミネートされて注目されています。突然死んだ兄が残した一人息子の後継人となった男性が主人公の本作は、昨年のサンダンス映画祭で絶賛され、本年の最高傑作のひとつと多くのメディアでも評されています。

 その他で注目したいのが、ヴァラエティ誌などの複数のメディアがオスカー候補にあげているマーティン・スコセッシ監督が江戸時代のキリシタン弾圧を描いた「沈黙-サイレンスー」。こちらは浅野忠信や窪塚洋介ら日本人キャストも多数出演していて話題ですが、ゴールデン・グローブ賞ではノミネートを逃しているだけに、オスカー候補に入るのか注目です。デンゼル・ワシントンが監督・主演の「フェンス」も有力候補の一つ。ワシントンと妻役のヴィオラ・デービスの迫真の演技も話題です。そしてゴールデン・グローブ賞で作品賞にノミネートされて驚かせたのは、メル・ギブソン監督が第二次世界大戦中の沖縄戦争を舞台にした「ハクソー・リッジ」。戦うことを拒否した実在の米兵を描いた物語は、オスカーでも候補入りするか注目されています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)