極寒の荒れ狂う海で遭難したタンカーと、救助に出る沿岸警備隊の実話を元にした。救助する側と、される側を同時進行で見せていく。パニックもの、遭難ものといえば、救助される側のサバイバルを描くものが多いが、救助する側の命がけぶりも存分に描いた。

 沿岸警備隊から救助に出るバーニー(クリス・パイン)、タンカーで指揮をとるシーバート(ケイシー・アフレック)と、2人ともがスーパーヒーローではないところがいい。周囲とのあつれきがある部分も同じなら、あきらめないところも同じ。

 遭難救助ものとしては王道の作品。ほんの少し業務を雑にこなしたことでとんでもない事態に陥り(身につまされます)、言うこと聞かないわがままな人がいたり(これは自分だったりするかも)、身をもってみんなを引っ張っていく(憧れます)…という。王道がゆえ、安心してドキドキできる作品です。

 映像も大迫力。タンカー真っ二つのシーンで、ぼう然とする船員と同時に、こちらもぼう然。これでもかというほど寒くて、痛くて、びしょぬれの気分を存分に味わえます。【小林千穂】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)