6代桂文枝(73)が襲名記念日で誕生日の16日、大阪・なんばグランド花月で、毎年恒例の独演会を開き、不倫騒動に揺れた今年の上半期を「振り返りたくない」「前を向いて」と語り、苦い思い出をネタに笑わせた。

 今年はゲストなしで「たったひとり会」と題して開催…のはずが、スクリーンに黒い服の文枝、壇上に白い服の文枝が現れ、2人の文枝が“トーク”してスタート。黒い文枝が「今年、ここまでどうですか」と、白い文枝に質問。今年は年明けから不倫騒動に揺れただけに、白い文枝は「……。今年は、振り返りたくないです。とにかく前を向いて、(先のことを)考えていきたい」と返し、会場をわかせた。

 文枝は12年7月16日の誕生日に三枝から6代文枝を襲名し、翌年の誕生日から落語会を開いてきた。例年はゲストを呼んできたが、今年は「少し前までは、落語をするのもしんどいと思う時期もあったけど、なぜか今年に入ってあたりから元気で。落語をやっても疲れんようになったんです」と言い、ひとり会にすることを決めた。

 NHK大河ドラマ「真田丸」に出演したことで「役者さんは真っ暗なとこで何度もリハーサルをやって、大変な仕事やな、と。そう思うたら、落語家は楽してんのちゃうかと思った」など語り、役者業が本業へ大いに刺激になり、今年は3席を演じることにしたと話していた。

 その3席は、今年3月にネタ下ろしした「天国へのメロディー」と、三枝時代に作った「誕生日」の2本の創作に加え、古典の「皿屋敷」をネタ下ろし。

 「皿屋敷」は、昨年3月に亡くなった桂米朝さんが、盟友で今年1月に亡くなった桂春団治さんに教え、春団治さんが代表作にした傑作として知られるネタ。文枝は、春団治さんの弟子、桂春之輔から指導を受け、米朝さんの長男、桂米団治の許可も得て、この日、高座にかけた。

 創作、古典の3席を演じきり、文枝は「今、73歳でございます。毎年、ここで誕生日に(落語会を)やっていますが、喜寿になっても、米寿、卒寿になってもここでやりたいと思います」と宣言した。

 以前から創作300本を目標に掲げており、文枝は現在、残り35本までこぎ着けている。

 「まあ、88歳(米寿)まで、まだまだ、15年ありますから、その頃には創作300本もクリアしてるとは思います。問題は白寿、99歳でこのお客さん、何人いらっしゃるか」と、満席の客席をいじってわかせていた。