アメリカではヴァンパイアものの作品が人気を集めている。全米の若い女の子を熱狂させた「トワイライト」シリーズ(08年~12年)、イケメンのヴァンパイア兄弟を描くテレビドラマ「ヴァンパイア・ダイアリーズ」、露出をいとわない俳優陣のセクシーさが話題を集めたドラマ「トゥルーブラッド」など、ヴァンパイアと人間が恋に落ちるストーリーの人気はまだまだ続きそうだ。

 アメリカではこのような“ヴァンパイアブーム”が起きているのに対し、日本ではあまり注目されていない。「トワイライト」シリーズの最終章「トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part2」(12年)はアメリカで3週連続で週末興行ランキング1位、興行収入約3億ドル(約240億円)を達成したのに対し、日本では初登場9位、興行収入も約4億円にとどまった。さらに、日本ではヴァンパイアの映画やドラマが非常に少ない。

 なぜ日米でこれほど差があるのだかろうか。一つの理由は、ヴァンパイアものの原作の注目度にある。「トワイライト」シリーズ、「ヴァンパイア・ダイアリーズ」、「トゥルーブラッド」はいずれもニューヨーク・タイムズのベストセラーとなった小説に基づいて映像化されている。つまり、最初から原作を応援しているファンが数多くいるのである。

 しかし、日本にヴァンパイアものの原作すら少ないことには、より深い理由がある。それは、お葬式の違いである。日本のお葬式は火葬が99%以上を占めるのに対し、アメリカで火葬は40%。“死者の復活”の概念をもつキリスト教徒が多いアメリカでは、海外ドラマのシーンで目にするように土葬が主流なのである。土葬であれば体がそのまま残るためヴァンパイアになることができるが、火葬では灰になってしまうためヴァンパイアになれない。日本では、ヴァンパイアを話に登場させること自体が難しいのである。そのため、ホラー映画には体のない“幽霊”が出現することが多い。

 このような文化的な違いは、日本とアメリカにおけるヴァンパイア作品の人気の差だけでなく、「バイオハザード」シリーズ(02年~12年)などのゾンビ作品の人気にも共通して言えることである。その一方で、アメリカではキリスト教信者が減り、土葬より安い火葬を選ぶ人が増えてきている。今後アメリカの文化の変化がヴァンパイアやゾンビものの作品にどのような影響を与えるか、注目したい。【ハリウッドニュース編集部】