女優知英(ジヨン=22)が初挑戦となるミュージカルの稽古に奮闘中だ。初主演するブロードウェーミュージカル「スウィート・チャリティ」(東京・天王洲 銀河劇場)が23日に開幕する。夢だったミュージカルにかける思いを都内の稽古場で聞いた。作品の主人公のように、正直にひたむきに、夢に向かって進んでいる。

 知英は1幕目の見せ場、同作の代表曲「今の私を見てほしい」を歌い踊った。ニューヨークのダンスホールで働く主人公チャリティ・ホープ・バレンタインが帽子を使って踊る難しい場面だ。表情をくるくると変え、パフォーマンスを終えると「楽しかった! 今の私を見て、という感じです」と、曲名そのままの表情を見せた。

 もちろん初めてのミュージカルは楽しさばかりではない。「踊りながら歌うのは今までやってきたことですが、演じることが加わると、こんなに大変なのかと思います。歌詞は全部せりふ。気持ちを乗せるのは本当に難しい」。韓国ガールズグループKARA時代の経験も踏まえてその難しさを説明した。

 歌、踊り、芝居の全てがそろったミュージカル出演は夢だった。稽古を始めた当初は、意気込む気持ちが強すぎた。「どのくらいで歌えばいいのか分からなくて、全力以上で歌ってのどを痛めてしまいました」。

 せりふの言い回し、アクセントにも苦労した。日本をベースに活動し始めて2年。「頭の中で考える時も日本語」と言うほど日本語は上達したが、英語も加えたトリリンガルだけに、名前や町の名前など、横文字は英語のイントネーションで言ってしまう癖があった。発音は正しいが、芝居の中では浮いてしまう。

 自己管理、稽古や周囲とのコミュニケーションを重ねることで、1つ1つ解決してきた。白湯(さゆ)やゴボウ茶でのどをケアし、アクセント違いは共演の岡幸二郎、平方元基らがすぐに指摘してくれた。待ち時間も貴重な稽古だ。「雑談はあまりしないで、せりふを合わせてます。何度も何度も合わせて、息が合ってくる瞬間が気持ちいい」。録音した歌や芝居を移動中にも聞くなど、24時間舞台のことを考えている。

 演出の上島雪夫氏は「『大変だけど絶対頑張る』と言った知英さんはチャリティに合っている」と、ひたむきな主人公に重ね合わせている。知英は「自分がやっていることで合っているのかどうか、不安なこともあります」と言うが「でもお客さんが笑顔になったらすごくうれしいだろうし、考えるとワクワクします。ミュージカル、病みつきになりそうな予感がしています」と笑顔を見せる。

 夢だった舞台が、近づいてきた。  【小林千穂】

 ◆知英(ジヨン)1994年1月18日、韓国生まれ。14年4月にKARA脱退後、ロンドン留学で語学などを学んだ。同年秋から日本で女優活動を始め、日本テレビ系「地獄先生ぬ~べ~」でゆきめを演じた。15年に映画「暗殺教室」やテレビ朝日系「民王」などに出演。今年は日本テレビ系「ヒガンバナ~警視庁捜査七課~」や映画「片想いスパイラル」などに出演。JY名義で歌手デビューもしている。167センチ、血液型O。

 ◆スウィート・チャリティ ニューヨークのダンスホールで働くチャリティ・ホープ・バレンタインはお人よしで不器用。男にだまされてばかりだが、いつも前向きで真実の愛を求めている。映画スターのビットリオ、会計士・オスカーとの出会いを描く。66年にブロードウェーで初演、68年にシャーリー・マクレーン主演で映画化。日本は72年初演で、これまで安奈淳、未唯mie、戸田恵子、島田歌穂、玉置成実がチャリティを演じた。