昨年6月末に閉館した大阪・新世界の通天閣歌謡劇場の移転先が白紙になっていたことが27日、分かった。この日、通天閣の歌姫として親しまれてきた演歌歌手叶麗子(51)が、同所近くで、新曲「くしたんのテーマ~串揚げと通天閣と私」発表イベントで明らかにした。

 「ここ新世界で長く育ててもらって、なんとかしてまたここで歌いたい。足長おじさんとか、タイガーマスクとか、伊達直人さんとか出てきてくれたら」。昨年6月の閉館後初めて、故郷に帰り歌った叶は、歌謡劇場の再開を切望した。

 関係者によると、昨年の閉館当時は、近くの串カツ屋5階の座敷を改装し、新劇場としてオープンする見込みだった。ところが、本歌的な改修作業に入ろうとしたところ、避難口の設置など、消防法の基準を満たすには「億単位のお金が必要」と判明し、移転計画は頓挫していた。

 叶によると「今、この近くで、空いているホール、劇場に改修できる場所があるか、探しています」といい、一時はあきらめかけた夢へ向かい、スタッフともども、動いている。

 今回の新曲は、作曲家中村泰士氏(75)が、そんな叶らを励まそうとプロデュース。「温かい人情の町、新世界」を描き、新世界串カツのキャラクター「くしたん」とコラボレーションさせた。叶は「この歌、元気でるんです。私も去年は落ち込んで(持病が悪化し)つえがないと歩けなくなって、引退も考えたんですけど、この歌をいただいて、また頑張ろうと思えました」。笑顔で話し、同曲とともに、歌謡劇場再開を願って活動を続ける。