国内の著名な漫画家らが、終戦の日の記憶をイラストや文章で表現した作品集「私の八月十五日~昭和二十年の絵手紙」の復刊に、東京都国立市の出版社「今人舎」が取り組んでいる。

 新たに作者が朗読した文章も聴けるようにし、戦後70年となる来年夏の再出版を目指す。趣旨に賛同した俳優の故高倉健さんの作品も追加される予定だ。

 高倉さんの作品は「日本が戦争に負けたらしいばい!」というタイトル。終戦の日、友人に呼ばれて寺に行くと大人たちの何人かが泣いており、友人から戦争に負けたことを聞かされた。「人生が変わる一瞬。諸行無常。この時が、初めての経験だったような気がする」などと記している。

 作品集は、日本漫画家協会常務理事の森田拳次さんが「表現する手段を持っている漫画家が、戦争の記録をしっかり残そう」と発案。「あしたのジョー」のちばてつやさんや「釣りバカ日誌」の北見けんいちさんら111人が寄稿し、2004年に出版した。

 高倉さんも作品を書き、合わせてちばさんがイラストを描いたが掲載が間に合わず、本が絶版になったため未発表のままだった。森田さんと交流があった今人舎が今年6月に復刊を決めた際、高倉さんらの作品を追加することにした。

 声でも聴いた方が心に迫ると考え、ペン型の音声再生機でページをタッチすると、作者本人の朗読が聴ける仕組みも新たに加えることにした。

 高倉さんが生前に朗読し、録音したMDは、8月21日に今人舎に寄贈された。高倉さんらしいゆっくりとした力強い口調で語られており、復刻版でその声を聴くことができる。

 作品集は販売するが、朗読はすべてボランティアのため、音声再生機は販売せず、作品集と合わせて教育施設などに寄贈するという。

 11月20日に東京都内の自宅で収録した漫画家の花村えい子さんは「書き手が気持ちを込めて語るので、文字以上に伝わる。ぜひ残してほしい本だ」と話した。今人舎の担当者は「たくさんの子どもに読んでもらい、戦争を考える教育に役立ててもらいたい」と話している。