俳優高倉健(80)が6年ぶりに銀幕へ復帰する最新作「あなたへ」(降旗康男監督、12年秋公開)の主要キャストが26日、発表された。高倉演じる刑務所指導技官・倉島英二の妻洋子を、01年公開の「ホタル」でも妻役で共演した女優田中裕子(56)が、また倉島が亡き洋子の故郷九州へ旅する道中で出会う自称元中学教師の杉野輝夫を、85年公開の「夜叉」以来26年ぶりの共演となるビートたけし(64)が演じる。ほか佐藤浩市、浅野忠信、草なぎ剛、綾瀬はるから豪華キャストがそろった。

 高倉が降旗監督と10年ぶりに組んだ通算205本目の最新作に、強力な俳優陣が集まった。注目は「世界のキタノ」ビートたけしと、高倉と2度目の夫婦役を演じる田中だ。3人は降旗監督がメガホンを取った「夜叉」で共演。脚本も、「夜叉」のプロデューサーで08年に亡くなった市古聖智氏が最後に残した原案を、降旗監督が昨夏に発見し脚本家の青島武氏と練り直した。今作は「夜叉」での強い縁が再び結ばれたといえる。

 ビートたけしは90年12月27日放送のニッポン放送「オールナイトニッポン」最終回で、週刊誌に「俺だって役者は出来る。役者は漫才できないだろ」と書いたことで、高倉が自分に興味を持ったエピソードを語った。高倉が「夜叉」で共演した田中邦衛に「たけしは物おじしないヤツだな。今夜から漫才の練習やってみないか」と持ちかけたことも明かした。今回の共演に、たけしは「『夜叉』以来、四半世紀ぶりに高倉健さんと一緒にお仕事できるということでとても楽しみにしております」と話した。

 また、田中は「ホタル」でも高倉&降旗タッグと組んでおり、「降旗監督のもと高倉さんと共演させていただけることを心からうれしく思います」と話した。

 配給の東宝は今春から夏にかけて出演陣を決定したが、次代の俳優やスタッフに「降旗組を味わわせたい」という高倉の思いも考慮。「降旗組」をよく知る田中や大滝秀治に加え、草なぎや綾瀬、三浦貴大ら初共演組も多数キャスティングした。高倉は出演陣の情報は、決定の段階で細かく把握していたという。

 今作は今月7日にクランクイン。都内と物語の出発点・富山のロケも終了し撮影は順調だ。高倉は「個性あふれるすてきな俳優のみなさんと共演できることをとても幸せに思います。おひとりおひとりとの出会いを大切にしながら、お芝居を通い合わせることを楽しみにしています」と期待した。

 ◆「あなたへ」

 北陸・富山刑務所の指導技官倉島英二(高倉)は50歳を目前に、刑務所に慰問に来た歌手洋子(田中)と結婚した。天涯孤独の2人は子どもを望まず、平穏な夫婦生活を営んでいたが、結婚から15年後に洋子が53歳で亡くなった。残した手紙には、スズメの絵とともに「故郷の海に散骨してほしい」と記されていた。妻はなぜ生前思いを伝えなかったのか…。英二は真意を知るため、自家製キャンピングカーに乗り総距離1200キロの旅路に出て、遺言に従い散骨したとき妻の真意に気付く。※なぎは弓ヘンに前の旧字の下に刀